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第22回 4bunnno3サロン
「モチベーションの引き出し方」

2021.11.04

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、
第22弾を実施しました。

今回のテーマは「モチベーションの引き出し方」です。

障がい者の就労準備や雇用に携わる方が悩まされるものに、支援対象の方のモチベーションが低いというものがあります。「社会人であればモチベーションをキープするのは当たり前」と考えがちですが、障がいの有無だけでなく、仕事へのモチベーションを要求することが難しくなっており、多様な方々のやる気を引き出す術はマネジメントの重要なスキルとして、より重要になっているように感じます。

今回は新たに中小企業同友会の支部長を務める方にご参加頂いたこともあり、幅広い、想定以上に深い情報交換をすることができました。以下レポートです。ところで写真を見ると眼鏡の男性ばっかりでしたね、今回は(笑)

■モチベ―ションが低い方の事例とその理由
・本人は低いと思っていないが周囲はもっと力を発揮して欲しいと感じているケース
 と、自分でもやる気がないと思っているケースがある
・自分は平社員でのんびり働きたいと思っていたが、上司の成長を促す話を聞いて
 いると「私はここにいないほうが良いのかもしれない」と感じる人がいる
・障がいのない方で採用時に給与額より、働く時間、時間帯にこだわる方が増加
・リーダーなどに昇格することは目指さず、現状維持をしたいと考える人も多い
・親に心配をかけないために働いているので、最低限の仕事で良いと考えている
・今まで人生で挑戦した際に上手くいかなかった経験が強いため、失敗に対する
 恐怖心が強く、チャレンジを選択できない
・自分で考えず、他人の指示に従うことが正しいと感じている(そういう環境に
 長くいた)
・知的障がいの方はモチベーションの管理が難しいと感じる
・障がい者雇用では仕事の内容や種類も限られているため、本人たちのモチベー
 ションが高くなり過ぎた場合、希望に応えられないことから、ほどよい程度に
 コントロールしたいという雇用サイドの感覚もあるかもしれない
・興味関心→実行→成功体験→賞賛→モチベーションUP というプロセスを経た
 経験が少ない
・乗り越えられない壁を強く感じている(中国の若者の寝そべり族など)
・モチベーションが低い方は近視眼的で、少し先を見通せていないように感じる
・働くことの前に、よりよく生きるモチベーションに課題のある方も多い

ここまでお話を伺うと、モチベーションが低いと企業が感じる方には大きく3種類あるようです。
①働き方の多様化タイプ
昇格・昇給を目指すのではなく、自分らしい働き化を目指している。能力は高く、また単純にモチベーションが低いわけでもなく、企業が求める働き方と合致していないだけかもしれない。
②生きるモチベーションが低いタイプ
働くことや生きることに対して、何らかのハードルや障壁が存在し、それらのためにモチベーション自体を引き出すことが難しい状態。
③仕事のゴールや手段の理解が不足しているタイプ
本人もモチベーションを上げたいと思っているが、上司や同僚との関係がうまく機能していない。

①に対しては就業規則の改善が採用時の働き方に関する価値観のすり合わせが有効でしょう。時代的にもサラリーマン戦士を揃えることばかりが良いものではありません。多様な価値観の優秀な人材を仲間にできる仕組みが必要ですね。
②は雇用企業が対応するには、今は難しいかもしれないため、ここは福祉の出番かもしれません。一方、福祉施設と雇用企業でできることには格差がある(シームレスには繋がっていない)のが現状です。福祉事業者は企業が支援対応できるレベルを理解し、そこまでご利用者を育てる、または共同して支援することを考える必要があります。逆に雇用企業は福祉事業者の現在の力量や限界を知り、どんな協力を要請するのかを考える必要があるでしょう。
③はマネジメントや仕事の内容、支援の仕方など雇用企業の取り組み次第で改善が可能です。既存のやり方に採用した方を合わさせるだけでなく、双方がもっとも有効に機能するあり方を模索する必要があります。

①、②、③のどれが得意なパターンなのかを認識すると良いですね。因みに僕が得意なのは③の状態支援で、③に該当するまで障がいのある方を育て、雇用現場を機能するように関係性を構築することです。

一方、このような話をしていると雇用企業のホンネとしては、自社が支援できる方を採用するという防衛策を考えるのは必然でしょう。この考え方には議論の余地がありますが、一つの事実だと捉えることも必要です。ご参加企業が面接時にモチベーションレベルをどのように把握しているか伺ってみました。

■面接でのモチベーションチェックで確認する内容
・今まで熱心に取り組んだこと
・この会社で何を為したいか
・障がいの受容度、障がいの事実を誰にまでお話しているか
・OFF時の過ごし方
・生活習慣の状態確認
・習慣にしていること、その継続期間、その中で得たこと

以上です。こういう内容を書くと、面接の場での回答対策だけを教える福祉支援者がいるそうですが、それは明らかに間違った対応ですね。正しい捉え方は、企業で活躍する人材を育むために、就労準備段階またはそれ以前にどのような経験や取り組みを提供しておく必要があるかを知ることです。つまり、「ゆっくり本人のペースで良いので、疾病や障がいの事実を受け入れつつも、自分に価値があることを思い出し、なんでも良いので熱心に取り組む対象を見つけ、その時間を増やす。そして徐々にできることを増やしていく。同時に生活習慣やOFFの日の過ごしかたも改善する。そして働くとは何か、自分はどのように働きたいのか、自分の意見を持ち、働くことへの関心や自信を取り戻す」準備が必要だということです。

では、次にモチベーションをUPするためにどのような取り組みをしているか伺ってみました。

■モチベーションをUPする施策
・本人が何をしたいかの話を聞き、その役割を与える
・昇格は役割のひとつであり、唯一と考えない
・自分の仕事が誰を幸せにするのを見たり感じたりす、実際にその対象の方の声を
 聴く機会をつくる
・雇用企業のホンネとしては、モチベーションの高い方(その素養のある方)を
 採用して組織を構築したい
・周囲の期待感と本人の成長必要時間にはズレがあることを知り、本人の成長スピ
 ードを把握する
・本人に意欲があっても、本人の置かれている環境によっては意欲が発揮できない
 場合もあるため、その場合は意欲を阻害する要因や環境を整備する
・本人の意欲源泉だけではエネルギーが足りないことも多い。如何に支援者(マネ
 ジメント)が意欲伴走をできるかが大切
・内定前に雇用主(面接官)と採用される方だけでなく、雇用現場と採用される方
 との関係を丁寧に作りこむ
・採用を面接という点の結びつきだけで決定せず、インターンや実習などを「ある
 程度の期間×複数の企業」で実施することで、働くことへの興味関心やその課題
 を見出す

レポートは以上です。
今回お話をして、モチベーションは 本人が自分のことを大切な存在であると認識できていること と強く関連していると感じました。福祉でも企業でも根底にこの価値観を大切にする必要があると思います。その上で、モチベーションを維持したり、引き上げるのは上司や支援者のもっとも大切な役割 だとも考えます。これには 習慣を支援するチカラ がとても大切ですね。
人は簡単には変わらないと考える人がいますが、それは結果のみを重視しているからと考えられます。結果が出るには時間が掛かるため、すぐに報酬が得られません。しかし、結果を出す行動の仕方は今すぐに変えることが可能です。先の目標を掲げるだけでなく、目標に向かって具体的に実行する内容に視点を当て、その実行習慣を支援するのです。行動習慣を継続すれば、時間をおいてその人は変わっていきます。モチベーションを引き上げる支援のあり方は、まだまだこれからのテーマだと感じました。

本日のレポートは以上です。

<次回予告>
第23回4bunnno3サロン 2021年11月20日 午前10時00分
テーマ:雇用・就職した初期段階にやっていること

実習や面接を経て就職初日。新しい社員に受け入れる上司や同僚、そして送り出す支援者も全員が緊張してその日を迎えます。そんな初日~1週間の間にどんな工夫をしているかは、雇用企業や支援者で意外に違いがあるようです。障がい者雇用の一丁目一番地は、就労定着の実現です。
人材ビジネス歴の長い僕は、障がいの有無関係なく、この最初の1週間でこの雇用・就職が上手くいくかどうかはだいたいわかると思っています。

そこで次回の4bunnno3サロンでは、そのためにこの雇用・就職初期段階で皆さんが何をやって、その中に何を見出しているのか情報交換したいと思います。

~情報交換内容~
・初日にやっているアクション
・1週間までにやっているアクション
・初期段階でチェックしているポイント
・こんなケースは上手くいく、こんなケースは続かない

来年3月までの4bunnno3サロンの日程は以下の通りで、テーマは未定です。ご希望のテーマがあればお寄せください。

第24回4bunnno3サロン 2021年12月11日 午前10時00分
第25回4bunnno3サロン 2022年1月15日 午前10時00分
第26回4bunnno3サロン 2022年2月5日 午前10時00分
第27回4bunnno3サロン 2022年2月26日 午前10時00分
第28回4bunnno3サロン 2022年3月19日 午前10時00分


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既存・新規いずれの方もご参加連絡お待ちしております。

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