TOPICS

第31回 4bunnno3サロン
「共通の価値観の育て方」

2022.07.11

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、
第31弾を新しいメンバー2名を含めて6名で実施しました。

テーマ:共通の価値観の育て方

障がい者雇用においてよく議論されるのが、生産性と配慮の優先順位です。
それぞれのメンバーや現場のマネジメントの価値観に任せているとチーム間で差異が生じることもしばしばあって、問題として報告されることも多いようですね。
生産性と配慮以外の観点も含めて、経営・マネジメント・メンバー間でどのように共通の価値観を浸透させるのか、皆さんで情報交換しました。

 ~情報交換内容~
・大切にしたい社員共通の価値観とはどのようなものですか。
・いまその浸透度合いはどのくらいでしょうか。
・上手くいっていることを教えて下さい。
・課題があれば教えて下さい。

因みに共通の価値観作りの正解を学ぶ場ではなく、皆さんが現場レベルで何を感じ、考えているのか共有し、共学びすることを目的としています。ではどんなお話が出たのか早速見てみましょう。

【大切にしたい社員共通の価値観】
・給料分以上の貢献をする
・配慮はするが遠慮はしない(合理的配慮はするが、自分のできることで活躍する)
・障害者であると同時に社会人であると考える
・組織を構成する一員である(一人で出来ないこともチームでクリアする)
・何をする会社なのか(理念・ミッション・ビジョン)誰に聞いても同じ答えが返ってくる
・相互の成長を支援する(成長意欲を刺激する)
・働くしあわせを実現するために 本人の努力・周囲のサポート・環境の工夫

>>>働く以上は成果(売上)に貢献することが必要であるというのは全員に共通した価値観でした。そのためには病状や障がいが理由で発生する困りに対して、どのように乗り越えるかという社員共通の価値観があると良さそうだと感じます。
配慮とは、できないことを主張することだと思われがちですが、これは違うと僕は考えていて、できないことを、本人と周囲(同僚や上司)と一緒に共有した上でどのようにクリアするかを考えることを配慮と呼んでいます。
本人が困っている状況に対して「それは君の問題だ」と言って本人にだけ努力を要求し、できないと言うと「甘えている」と言う組織も世の中にはありますね(今回のご参加企業は違いますよ!)。僕は「本人の努力」「周囲のサポート」「環境の工夫」という3つの視点で本人の困りにアプローチし、それぞれのさじ加減を社員共通の価値観にしておくと良いなと思っています。僕の理想は本人と周囲それぞれが今できることを相談し力を出し合うことです。最初は合計で100点になることは目指しません。例えば最初は本人20の周囲30の合計50点でもOKです。それでも50点も改良したことを喜びます。しばらくすると本人や周囲がもう少しできるようになるかも知れませんし、環境の工夫(新しいルールができたり、仕組みができる)が進むこともあります。このように徐々に成長していけることこそ障がい者雇用の現場のあり方ではないかと考えます。

【現在の浸透度合い 自己評価】
・40%(永遠のテーマ、配慮or甘やかし)配慮も遠慮もある会社
・2~30%(マネジメントとチームでは格差がある)
・6~2%(腹落ちまでしている人は少ないのではないか)⇔関心がない、無関係
・60%(自分の事だけで精一杯の層がある、解っているけど行動にまで至っていない)
・30%(時間を掛けながら芽を育てる)
・50%(メンバーの価値観を聞き、話しているとズレは少ないが道半ば)

>>>ご参加者の主観ですから、各自の価値観に大きく左右される数値になっていると思います。ですから大切なのはその理由ですね。皆さんのお話を伺っていると、次のどのステージをいま進んでいるかによって、評価がなされているように感じます。
① 目指すべき姿(理念、ミッション、ビジョン)が言語化されている
② 理念、ミッションやビジョンが共有され、浸透している
③ そのための具体的な行動(規範)や、直近の目標(ゴール)が示されている
④ 規範やゴールが日常的に意識される運営がなされている
皆さんの組織ではどこまでできていますか?

【成功しているポイント】
・メンバー価値の最大化を目指すという価値観が浸透している
・評価基準をマネジメントスタッフに考えてもらうという仕組み(自分たちから発信してもらうことで、自分ごとに育っている。会社と意見が異なる箇所は議論して調整している)
・価値観についてメンバーに考えてもらう機会を作っている
・経営とマネジメントでは価値観を共有する機会が作れており、言動からも共有できていると感じる(障がい者のメンバーと同じことがまだできていない)
・外国人を採用することで、当たり前が当たり前じゃないと気づく機会が作れた(ダイバーシティ感覚の醸成)
・もっとも近い中心メンバー(部下)との価値観を合わせ、その次に広める方策を取っている
・価値観の話は記録を残し、いつでも振返れる仕組みを作っている
・正しいと思っていることにズレ感じたら、相互に指摘しあう(言いやすい環境を作る)
・なんでも口出ししすぎず、我慢して現場に委任する(任せて見守る)

>>>今回ご参加の皆さんは、ご自身の思いや会社の考え方を丁寧に、同僚や近いメンバーと議論したり、確認し合っているように感じます。共通の価値観は一朝一夕につくり上げられるものではありませんね。理想を高邁に掲げれば終わりなのではなく、如何に普段使いするかがカギだと思います。

【今後の課題】
・配慮と甘やかしを分離する(摩擦に上手に向き合う、向き合い続ける)ために、障がい就業者や支援者のロールモデルを育てる。
・会社に来れない、すきを見てサボる、居眠りするなどの問題に対し指導したことを結果(行動変化)につなげる。
・指導をすると反発や鬱化、時には退職に繋がる状況を回避する。
・専門性が無くても相互に関わり合える。

>>>提示された課題を伺うと、いくつかのポイントが見えるように思います。
・採用時の十分な価値観のすり合わせ
 障がい者採用の場面では、必要な配慮に関しての質疑はあるものの、業務スキル視点で検討されることが多いように思います。また求職者も本来の自分の病状や特徴、癖などは隠しがちでそれらを俎上にのせた上で採用企業と相談をするという感覚が弱いですね。恐れずに言えば、障がい者採用では悪気なく嘘つき合戦が行われています。素直に困りを面接の場で伝えた方が得をする世界観をつくることができると良いと考えています。

・分散支援体制の構築
 病状を見ることができる医者、支援関係について判断できる第三者定着支援者や社内メンター、そしてマネジメントと同僚。マネジメントを同僚が病状を正確に認識し、支援関係のジャッジができないとダメという考え方の方もいますが、僕はそう思いません。僕はまったくと言っていいほど医療に関しては分かりません。そして失礼を承知で申し上げると、就業現場のことを理解している医者はほぼいないでしょう。当たり前ですよね。それぞれが役割を認識し、必要であれは適任者に協力を仰いだり、情報を共有すれば良いだけだと思います。上司や同僚に求められることは、ダイバーシティ&インクルージョンの価値観と、対話能力だけで良いと僕は思います。

2時間みっちり情報交換をしたご参加者の感想は以下の通りでした。
・メンバー、マネジメント、トップごとに意識するポイントに違いがあると良いと思った・
・組織規模やステージなどによって常に考え続けるべきテーマだと感じた
・組織文化をどのように作るかを今まで考えたことが無かったので、面白かった
・このテーマでチームメンバーと話し合ってみると良さそうだと感じた
・最近考えていたテーマだったので、非常に良い機会になった
・正しいことを言うだけでなく如何にメンバーを上手に巻き込むかが鍵
・苦手なテーマなのだが、今日の話は地に足がついたもので理解しやすかった
・引っ張るリーダーではなく、サーバント型リーダーを意識したい

本日のレポートは以上です。
途中にも書きましたが、共通の価値観とはその組織の風土文化ですから、一朝一夕には出来上がりませんね。どんな言動をしていると称賛されるのか、どんな態度を取るとたしなめられるのか、その積み重ねだと思います。
ところで、僕の娘が通う学校では、いじめに対する価値観が全校生徒で共有されています。
「いじめにおいてもっともよくない立場は、いじめる人たちでも、いじめられる人たちでもなく、いじめを見て何も言わない周囲の人たちである」
実際に、娘の学校ではほぼいじめは無いようです。なぜならいじめの前兆行動があった段階で、周囲から咎められ、修正されるからです。


<次回予告>
第32回4bunnno3サロン 2022年7月16日 午前10時00分
テーマ:メンバーとの対話、どうやっていますか?

コロナ禍でのリモートワークの広まりの裏側で、メンタル的な問題を抱える人も増えており、障がい者雇用に留まらず、昨今メンバーとの対話(ダイアログ)が大切だというお話はよく耳にするようになりました。さすがに指示だけをしていれば良いというマネジメント手法は減っていると思いますが、メンバーと対話ってどうすれば良いの?と悩んでいるという記事をよく見ます。そこでメンバーとの対話について皆さんで情報交換しましょう。

 ~情報交換内容~
・何名で、どのくらいの頻度で、何分くらいでやっていますか
・どのようなテーマですか
・対話のこだわりやコツを教えて下さい
・どんな成果が出ていますか

<今後のサロンスケジュール>
すべて午前10時から12時の2時間で実施します。
各回エントリーされた方あてに、ZOOMのURLを送信します。

第32回 2022年7月16日
第33回 2022年8月6日
第34回 2022年8月27日
第35回 2022年9月17日

サロン会員への登録をご希望の方はこちらをご覧いただき、手順に従ってエントリーしてください。
既存・新規いずれの方もご参加連絡お待ちしております。

一覧へ戻る