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障がい者雇用を始める企業がホントは最初にやっておきたいこと

2022.09.07

report

川崎市の障害者雇用促進ネットワーク会議の一環で研修を実施しました。
日程は2か月近くまえの7月15日でした(記事にするのに時間かかってスミマセン)から、コロナの第7波が始まる頃でしたので、予定通り十分対策をしながら対面スタイルでした。

昨年11月から「川崎市」と会議の運営責任者の「企業応援センターかわさき」の3社で話をしてきたことは以前別な記事で書きましたが、その本番です。

今回は6つの各テーブルに記録係のかたが入って下さいましたので、ワークした際に各テーブルで何が話されたか、沢山情報を集められました。今回は、その一部になりますが、障がい者雇用を始めようとする企業が何を考えているか、見てみましょう。

◆なぜ障がい者雇用が進まないと考えていますか。
・納付金を一番に考えて、費用対効果があるのか疑問(採用ポリシー)
・障害者に割り当てる仕事が想像できない(適正業務)
・障害者が仕事をするスペースが限られている(場所・スペース)
・各部署の担当者が忙しい(多忙)
・会社に人的な余裕は無い(多忙)
・受け入れ側の体制が整っていない(受け入れ体制)
・指導体制が難しい(指導体制)
・体調の悪い時の対応の仕方に困る(指導体制)
・対応者が苦労している(指導体制)
・何かあったら人事が対応(負担大)
・雇用者を育成する期間が短く、成果を求められる(負担大)
・担当部署は無関心(無関心)

・店舗側が一緒にやろうとする意識が弱い(無関心)
・指導が入らなければ OK という認識がってある(無関心)
・現場との温度差がある(無関心)
・受入れ側は「なんでうちなの」という反応(無関心)
・採用現場以外は当事者意識が低い(無関心)
・お互いの意識や常識がかみ合わない(無理解)
・マッチングが合わない(無理解)
・知識が少ない(無理解)
・そのような作業が提供出来るか分からない(無理解)
・雇うための知識、ノウハウがない(無理解)
・どこまでお願いしてよいか判断に迷う(無理解)
・指導方法、明確な業務が分からない(無理解)
・マッチングを考えると進まない(無理解)
・どう取り組んでいいのか分からない(無理解)
・昔苦労をしてトラウマがある(無理解)
・どういう仕事を仕せられるかわからない(無理解)
・本当に仕事ができるのか疑問(無理解)

沢山上がった理由を僕なりに属性分類すると、総数29件のうち、無関心と無理解が多いですね。因みに無関心は、障がい者雇用に対して興味関心の薄さが根底にあると感じられたもので、無理解は障がいや障がい者雇用に対して思い込みや良くない側面に視点が行き過ぎているものを分類してみました。
無関心が6件/29 (約20%)
無理解が12件/29 (約40%)

つまり障がい者雇用に対するよき認知がまだ広がっておらず、不安やマイナス心理で、イヤイヤ向き合っているのが現状であると感じます。

イヤイヤ向き合っていては、上手くいくものも上手くいかないですねよね。そして上手くいかない時に「やっぱりね、最初から上手くいかないと思っていたんだ」と言いたくなってしまいそうです。

今回の研修では、まさにこのことを想定していたため、企業が最初に取り組むべきことは、次の二点であるとお伝えしました。

1)経営トップが障がい者雇用に取り組むことを全社に宣言すること
障がい者雇用に対する価値観は様々ですから、会社として軸となる価値観や考え方を準備する必要があります。これはトップにしかできないことです。よって、障がい者雇用を進める際には経営トップと話し合いを行い、全社に障がい者雇用に関する価値観と進めるという号令を出してもらうことが大切です。

2)実際に障がい者雇用をする現場と一緒に無関心・無理解を克服すること
トップによる号令を一社員として聞いているだけであれば、「なるほど、いいね」と思えるはずですが、実際に自分が取り組むと思うと、腰が引けてしまう方も多いでしょう。そこで、実際に雇用する現場を定め、その部署のメンバーと一緒に無関心や無理解の理由を素直に出しながら、必要に合わせて学びを深めます。学びの機会を一方的に与えるより、ガス抜き(障がい者のことに構っている暇はないなどの意見を実際に口にする)時間を事前に挟むほうが、結果的にその後の部署の運営が上手くいくことが多いようです。

今回の研修では、上記(2)を集中的に体感して頂く構成にしました。ご参加者と川崎市が手配して福祉支援者でチームを作り、以下のセッションを行いました。
  ①障がい者雇用に関する不安をあえて口に出す
  ②障がいについて学ぶ
  ③障がい者雇用のメリットを意見交換する
  ④会社の方針(これは事例として僕が作成)を発表
  ⑤感想共有

ご受講後のご参加者の意見を見てみましょう。

・まずはTOPへの説得が必要という視点がなかったため、驚いたが、やるべきことが明確化したため、前向きになった
・精神障がいにおける病気と障害の違いがわかっていなかった
・精神障害者の特性についてイメージと異なることが多く、社内で理解を進める必要があると思った
・今後もモヤモヤしながら、障害者雇用を担当していきますが、それでも今日いただいたヒントを活かしながら取り組んでいけそう
・思いやりの気持ちを持って接する事が大事だと理解した
・やり方を間違えると鳥かご(ただ障がい者がいるだけの環境)を作ってしまうと感じた
・今後どうやって支援態勢を整えていこうかと考える機会になった
・不安はあると思うけどやろうと思えた
・トップを動かすにはメリットや理念だけでは薄いため、何か別な切り口が必要だと思った
・現場と雇用数障がい者のマッチングが大事だ感じた
・現場の人達も得するようにしたい
・お互い win-win の関係性になるように取り組みたい
・精神障害の方の採用に踏み切る必要があることは想定外であった
・精神障害でもいろいろなタイプな人がいると感じた
・障害のある方とまずつきあうことが大切
・障害特性より、一人の人間として認める
・障害のあるなしにかかわらず共に働くことを支援することで、会社のパフォーマンスがあがる
・トップが障がい者雇用の必要性を理解していないとか感じた
・精神の方は難しいと考えていたが、まずは自社で取り組む体制を作りたい
・会社のメリットとして業績などの数字よりも、SDGsなどコスパ以外の価値やインパクトがあることを伝えたい
・雇用率が足りてない状況からスタートし数字に追われていた。やらされている感でやるのはしんどいと感じるため、方向転換をしたい
・会社として彼らが活躍できるステージを用意していけると良いと思えた
・トップダウンで雇用を進めることが大切だと理解した
・当社は雇用に協力的で実際に求人も出している。あとは通勤や在宅等、雇用の仕方についての検討が必要だと思った。
・まずはトップの考え方次第だなと思った
・進める中で逆差別(採用された障がい者に対するやっかみの気持ち)も生まれるのではないかと感じた

以上です。
その他、自由記入欄を拝見していると、漠然としていた障がい者雇用の取り組むべき姿が明確になったことで、不安が沸いたというご意見が2つほど見られました。
研修を受けて不安になるのは、ちょっと違うかもなぁと思いますが、研修後実施した川崎市の方たちとの振返りのミーティングでは、「それは進歩です!」と仰って頂き、少し心が楽になっています。

障がい者雇用は、楽で簡単ではないかもしれません。
いま流行りの、農園型のようにお金を支払うことで、法定雇用率を手に入れるという方法もあるでしょう。それでも僕は、障がいのある方と共生する道を探す企業さまやご支援者さまと一緒に汗をかきながら進む道を選択したいと思います。
それが、本来の はたらく という意味 だと思うからにほかなりません。

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