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第35回 4bunnno3サロン
「身の回りの方の鬱化傾向に気づいたその時、何ができますか?」

2022.11.16

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、
第35弾を4名で実施しました。

テーマ:身の回りの方の鬱化傾向に気づいたその時、何ができますか?

こういったお仕事をしていると、メンタル症状の方との接点は多いものの、既にメンタルの疾患のある方や、回復途上にある方と関わることが多いですね。でも一般社会では、先日まで元気だった人が明らかに元気を失っていくことを目の当たりにすることのほうが多いのかも知れません。先日僕が長年支援している元教え子(就労移行時代の卒業生)からメールで相談を受けて話している時にいつもと違う言葉を使うことから「あ、この人はいま鬱傾向にあるんだ」と気付きました。そこで「希望があればカウンセリングするよ」と声を掛けました、以下はカウンセリング後に頂いたその方のコメント(ご本人に許可を得て原文のまま記載します)です。

“今日はありがとうございました!朝は心も体も重くて辛かったんですが、
心にワクチン打ったように、心に羽が生えてもう私は自由です。
鎖が断ち切れて、元気になりました。”

久しぶりにいい仕事をしたと思いました(笑)
皆さんだったらどうするのかなぁと思い、今回のテーマにしてみました。

 ~情報交換内容~
・鬱化傾向の人に関わったことありますか
・そんなときに大切にしたいポイントはありますか
・どんなアプローチをしますか

因みにここでは脱福祉の正解を学ぶ場ではなく、皆さんが現場レベルで何を感じ、考えているのかを共有し、共学びすることを目的としています。では今回もどんなお話が出たのか早速見てみましょう。


<ご参加者が経験したケース>
①精神3級のうつの診断を受けた新規に入社した方。毎日就業後に面談をし、その際は落ち着いていたが、入社2か月目から急に状態が悪化し1か月間休職。翌月に復職し出社はするものの、遅刻や早退が続く勤怠悪が続き、結果再休職してしまった。復職後は気合いで出社するものの、ふらふら壁を伝って歩くような状態。自分で今の状態を把握ができておらず、帰宅指示をするとやっと安心した顔をして帰る。
=その時の自分の対応=
本人と話をし、自分のコントロールが上手くいっていない状況にあることを相互に確認。休職期間中に支援者の力も借りて「自分と向き合ってみる」と話してくれた。休職明けに話を聞くと前職で就業中に負ったこころの傷があり、会社に出社すると心が辛くなるとのことが分かった。悩んだもののその問題は当社の支援外の話としてご理解頂き、支援者と一緒にどのようにクリアするかを考えて実行して欲しいと伝えが、上手くいかない期間が続き結果退職に至っている。私も昔朝の身支度中に何もないのに涙がつーっと出るという経験をしたことがある。その時に何が原因かを考え頑張り過ぎていたことを止めることで回復した。私はこの方にも自分と同じように問題と向き合い、対策を講じることでクリアして欲しいと考えてしまっていたが、人によって内容も状況も経ている経験も違う中で、もっと違うアプローチが出来れば良かったと思っている。

②入社時は鬱から回復していると医師の診断があったが、仕事開始1週間で「しんどい」と発言があった方。1日に3回各10分定期的に会社全体で設定されているリカバリータイム(疲労回復を目的にした時間)ではyogiboでぐったり寝ている状態。最初は丁寧にリカバリーに取り組んでいるのかと思いきや、業務時間もエネルギーが無いように見え、仕事に集中して取り組めない状況。
=その時の自分の対応=
連休があったのでそこで回復できたらいいねと相談していたが、逆に連休明けに長期療養を希望され、その後復帰することなく結果退職した。入社時にまだ回復しきれていない方を受け入れてしまったと感じている。

③昔のご自身の話。以前の職場は激務環境で、上司の要求が高く毎日終電以降に自腹でタクシー帰りが半年ほど続いていた。周りから大丈夫かと心配されることが多かったが、自分の判断の基準がおかしくなっており、大丈夫と思っていたが、今思うと鬱の始まりだったかも知れないと思う。
=その時の自分の対応=
周囲からの強い勧めで産業医の受診を受ける機会があったことで、結果上司が業務のあり方を考えたようで少し楽になり、さらにその後異動があり違う部署で適切な働き方をさせてもらうことで回復した。因みに就業時間が短いほうが結果パフォーマンスはあがるという経験をした。

④人材紹介会社時代の後輩の話。新卒すぐにご登録者の登録担当(キャリアアドバイザー:通称CA)をしていたが、社会人経験も、転職経験もない彼らが自分より大人の方のサポートをするだけでも大変だが、相手のメンタル不調の話や辛い経験などの話を聞くことで、そのCAが心身を病みクリニックに通院しているケースもいくつか見た。この後輩もある日登録対応が終わった後泣いていた。
=その時の自分の対応=
本人に寄り添ってあげたいと考え、就業後に声を掛け「どうしたい?」と聞くと、「カラオケに行きたい」というので一緒に行き熱唱した。


<支援時のポイント>
メンタルの方の苦しさに触れる際には、自分の芯が揺らぐときがあります。支援する際のスタンスは強固でドライ過ぎても良くないですが、揺らぎすぎたり同調しすぎたりするのも良くないと考えます。人の辛さに触れる際の前提として自分の心を守ること、その上で苦しむ相手の方を支援することが大切ですね。いくつかサロンで僕が話したことをまとめてみました。

1)感情で捉え過ぎない
相手の状況や情報の感情(エモーショナル)側面を強く捉え過ぎないようにしましょう。場合によってはご本人以上に感情的になってしまうケースも見ます。事実(ファクト)捉えるようにしたいですね。

2)情報を整理する
心の状態が悪くなると、思考が複雑になる傾向があります。相手の方は自分でも何がどうなっているのか分からず混乱していることが多いでしょう。ゆっくりおちついた雰囲気を作りながら聞き手は話を聞き、図や文章として目に見える形にしながら情報を整理することで、混乱している状況から抜け出ることを目指すと良いでしょう。
また混乱の理由は、複数の困りがこんがらがっているのも一因です。一度に解決するのではなく、①困りが二つ以上あることを確認、②どちらのほうがより優先順位が高く先に解決したいか(もう一方は置いておく)を決断 するというステップを踏むことをお勧めします。

3)相手がどうしたいかを確認し、その意見を尊重する
聞き手が自分の意見として「そんな時はこうすると良い」というのではなく、情報を整理したうえで「どうしたい?」と聞いてあげると良いですね。もちろん出て来ない場合もありますのでその時は一緒にアイデアを複数だし、本人に選んでもらうと良いでしょう。また聞き手が良くないと感じる意見を相手が言った場合も即答でNGは出しません。「●●をやりたいの?」と受け止めてその内容を言葉にしてフィードバックします。その上で「私は●●はあんまりお勧めではないな」と意見を言う程度が良いですね。どうしても●●をやりたいという際は、安全な環境を準備し見守り、終わった後には感想を聞けるとよいですね。

4)何かを「出す」ことは大切と捉える
「つらい」と言葉にしたり、「涙」を出したり、「汗」をかいたり、カラオケで「歌」を大声で歌ったり、何かを「叩いたり」など、何かを体の外に出すことは安易に止めずに、本人も周囲も安全な状況を作り、出すことは良いアプローチだと感じます。逆に「泣くな」とか「おとなしくしなさい」などのアプローチは強いストレス下では良くないことだと感じます。

<4bunnno3のお勧め対応法>
①相手との信頼度を正しく把握します
相手が自分を信じてくれていないと支援はできません。距離がある方には強く介入せずに「何かいま僕にできることあるかな?」と伝え、しばらく傍にいます。相手の思考や言葉のペースは思った以上にゆっくりですので、相手の言葉を待ちます。

②支援をして欲しいと言われたらまずは本人の話を聞きます。
上記もしましたが話を整理するお手伝いだけでずいぶんと相手は楽になります。

③ゴールを設定します
その会合の時間と、その時間の最後にどうなっていたいかを聞きます。②で話を聞いてくれたから今は大丈夫ということも多いでしょう。アドバイスが欲しいと言われる場合は、これ以降で初めて僕の意見を言います。

④現在のうつレベルを図を見せながら説明し、私の感じる困りごとを共有します
一般論としてうつレベルによる症状(不眠、昼夜逆転、集中力の低下、悪い思考の暴走など)の推移をお話しします。本人が問題視しているのは、本人は今抱えている困りごとのことですが、僕が気にしているのはその困りごとによってあなたがうつ症状を進行させていることであると伝えます。

⑤うつ症状を進行させないという観点で双方の価値観を一致させる

これができると方法は現在頭がいっぱいである問題を解決することだけではなく、その問題を一時的に置いておく、まずはリカバリーするという方向に意識が向くようになります。抱えてる問題が即時に解決できるのであれば良いのですが、そうでない場合も多いですね。まずは生命の安全を大切にする選択ができるようにします。大きな問題はストレス環境下で考えるより、フラットな状況で考えるほうが良いアイデアがでるものです。まずはうつ症状から脱出することが大切ですね。


本日のレポートは以上です。
今回のご参加者は全員企業の方でしたので、企業における限界という観点もも入っていたかと思います。
残念な結果に至ったお話も開示して下さいましたが、就労準備段階でご本人がトレーニングしておければクリアできたかもしれないと思うこともありました。
うつ症状が進んでいるということは、複数の大きなストレスがご本人に乗っかっており、その大半が脳に粘着性のある記憶として張り付いたつらい経験や、人間関係などです。まずはそれを取り除くことが大切だと思います。もっとも有効な方法は「反応しない」という技術を習得することですね。ご興味ある方はこちらの本がお勧めですよ。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
草薙龍瞬 著  KADOKAWA/中経出版


<次回予告>
第36回4bunnno3サロン 2022年10月19日 午前10時00分
テーマ:障がい者の雇用現場実習&インターンシップ

障がいのある方の雇用が進むと、一方状態のよりよくない状態の方にターゲットがスライドしていきます。これは雇用現場でもそうですが、就労移行などの福祉事業に通所する方でも同じことが言えます。
2年間の就労移行期間では育成が間に合わず、採用企業も採用基準に到達した方を探すことに苦労しますが、そうはいっても雇用率は上昇します。
さて、どうする!?
僕が11月から参加した企業では、この問題に雇用企業と一緒に取り組む長期インターンシップを提案し、企業が良き採用をするために一歩踏み込んで育成から参加するという企画を推進しています。
一昔前までは障がい者雇用にそこまでコストを掛けられないという企業が多かったのですが、いまや流れは変わってきているように思います。
可能な範囲で同社の取り組みも話しますが、皆さんの周りでの雇用前の実習のあり方や障がい者インターンシップなどに取り組んでいれば情報交換をしましょう。
これからの障がい者雇用のあり方を垣間見ることが出来るかも知れませんよ。

 ~情報交換内容~
・関わる障がい者の方の状態に変化は感じますか
・変化がある場合、どのような困りがありますか。またどのように対処していますか
・雇用前実習やインターンに関して、どのように取り組んでいますか。またその中で
 良いこと(GOOD)と、もっとこうなると良いこと(MORE)を教えて下さい


<今後のサロンスケジュール>
すべて午前10時から12時の2時間で実施します。
各回エントリーされた方あてに、ZOOMのURLを送信します。

第38回 2022年11月19日
第39回 2022年12月10日 <<<年内最後

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既存・新規いずれの方もご参加連絡お待ちしております。

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