2024.04.23
report
雇用企業で実際にサポートしている事例をご紹介します。
とある大手企業からの依頼で、今年1月から1年間かけて全6回(つまり2か月に一度)障がいのある従業員(以下メンバー)のセルフケア力を鍛えるための研修を実施しています。
数年前から徐々にメンバー数を増やしている同社では、障がいのある方を集めて効率的に社内の業務を担当するいわゆるオフィスサポートチームを編成しています。メンバー数が10名を超え、今年はそれがさらに倍になる予定だそうです。そんな中、現場のマネジメント担当者は以下の課題を指摘していました。
・出勤率(生活リズムの不安定さ)
・組織内コミュニケーション
・業務モチベーション
そこで4社による企画提案のコンペがあり、最も費用がかかる提案だったそうですが、企画内容とフォロー体制の質を高く評価いただき、当社(営業会社とのプロジェクトチーム)が選ばれました。
1月に実施した1回目の研修では、コミュニケーション力をテーマにしました。
初回ということもあり、通常のコミュニケーション力の知識研修ではなく、最初に全員で「対話のルール」を考えてもらい、次に自分たちで作った対話のルールを守りながら「自分たちのありたい職場とはどのようなものか」を対話しながら考えてもらいました。この対話を通じて、コミュニケーションのあり方を学んで頂くというものです。
できあがった対話のルールは大きな模造紙に清書して、今でもオフィス内に掲示して下さっています。研修の後、メンバーの皆さんとはチャットで繋がらせてもらい、各自が自分のコミュニケーション課題を設定して、共有してくれました。その後、一度コミュニケーションのことで社内トラブルが発生した際にフォローも担当させて頂きましたが、対話のルールを再確認したり、各自の課題を見つめ直すことでメンバーの皆さんも納得して問題を解消することができました。
3月の2回目は、配慮相談力をテーマにしました。同社は僕が見てきた中でも配慮提供が充実しています。その一方で以下の問題があるように思われました。
・配慮と甘えが混在
・休憩量や休憩の仕方が自由裁量(メンバー間にストレスが発生)
・1日を通してエネルギー量が減少しすぎる方がいる
そこで、一日を通したエネルギー量の変遷としてのありたい姿(大きく減り過ぎずに一日を過ごす)をお見せし、休憩ではなくリカバリーを行うことの大切さに気づいて頂きました。そして全員で、肉体疲労と脳疲労に効果のある対処を実践するセッションを行いました。
研修の翌日から公認のリカバリータイムをオフィスで設け、基本その時間はリカバリーに取り組み、それ以外の時間は業務に集中するという、オンとオフの感覚を高めることにも成功したようです。
5月以降も違う視点で気づきと学びを与える研修を実施し、年末にはこの1年間で各自が得たものや変化した点をプレゼンテーションしてもらうように計画しています。
今まで企業が雇用した障がいのある方に、ここまで時間やコストを使って研修を施すという例はあまり多くありませんでした。企業が障がい者雇用を法定雇用率の達成のためではなく、戦力として期待しているからこその変化なのだと思います。こういった取り組みが世の中に増えてくると嬉しいですね。もちろん喜んでお手伝いさせて頂きます。