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就労パスポート 使っていますか?
~今後の流れを読む~

2020.01.16

know-how

とある会議で、出席されていた障がい者に特化してサービスを提供している人材会社の方(以降Aさん)とお話をしていました。僕は求職者支援の直接の現場から離れているため、現場の温度感を知りたく聞いてみました。

「実際に就労パスポートを持って就職活動をしている人ってどのくらいいます?」

2020年1月現在、首都圏にて多くの精神障がい者の支援をしている人材会社の現場最前線で活動するAさんの認識はこうです。

「見たことないです」

皆さんは就労パスポート、見たことありますか?

気になるのは
 「実際に就労パスポートは使われるようになるのか!?」 
 「精神障がい者の就労定着の救世主になるのか!?」 ということですね。

そのためにいろいろと検証・・・と思ったのですが、検証過程を書いていたら途方もなく長くなったので割愛して、検証したポイントごとの僕の私見を以下に書きます。

『就労パスポートはツールとして使えるのか!?』

① 目的やゴールの設定
  現在の精神障がい者の就労定着に関する問題が概ね抑えられており、このツールの
  目的やゴールとして良くまとまっていると感じます。

② コンテンツ(書類の項目設計)
  利用者各自の細かい要望はあるかも知れませんが、エクセルフォームとして自由裁
  量の余地があることを踏まえると、概ね項目の設計も良くできていると感じます。

③ 使いやすさ、見やすさ
  これは・・・まだまだ改善の余地が大です。せっかく良いものを作ったので、できた
  らプロのデザイナーを雇って、使いやすく見やすくして欲しかったと思います。

ここまでが、ツールとしての就労パスポートの検証でした。

では次の問題です。
意味のあるツールを作って世の中にばらまいたら使われるでしょうか?

答えはおそらくNOですね。

就労パスポートはコミュニケーションツールですから、コミュニケーションの発信者(障がい者&支援者)と受信者(採用企業・現場)の双方がこのツールを正しく認識し、使いこなせないと機能しません。一人だけではLINEが使えないですね。

ですからこれから大切になるのは、発信者と受信者の認知が広まって、就労パスポート体験が行われることです。
そこで、『就労パスポートは認知されるのか!?』の検証です。

④ 受信者(採用企業・現場)対策
  厚労省のHPを見ると、事業主向けのセミナーが全国で実施されるようですね。
  本件の管理機関である労働局のひとつにお電話して、話を聞いてみました。
  「年度内は しごとサポー養成講座 と抱き合わせで展開し、予定としては数年
  継続する」とのことです。

しごとサポーター養成講座の受講者が再受講するかどうかは気になりますが、最低限の事業主への認知訴求策はあるということですね。

⑤ 発信者(障がい者&支援者)対策
  先の労働局によると「HWエリアごとに就労移行・A型・B型などの支援機関に
  直接連絡をして、ワークショップなどが行われる」とのことです。
  
仲間の支援機関に尋ねると、連絡があったところと未だのところがあるようです。また施設を利用していない方にはHWが勧めるのだとすれば、発信者向けの認知訴求策はあると考えても良いかもですね。

つまり機能するための一通りの仕組みは揃っているようですから、一度は使われるようになるところまでは行けそうな気がします。

そして最後の関門です。
『就労パスポートを使ったら、成果が出るか!?』

これは使った人たちが、SNSで「就労パスポートってサイコーだぁ」と発信したりなんかすると大成功ですね。

僕は、今のままでは難しいかもと感じています。
それは、多くの発信者(障がい者&支援者)が、発信内容を持っていないためですね。
新卒採用の世界の話で例えると、上手くいかない学生の問題は、情報発信ツールがないことではなく、本人自体に記載する情報コンテンツが不足していることです。僕が新卒学生の支援をしていた時に見かけた良くある風景はこんな感じです。

支援者:「学生時代に何をやっていましたか?」
学生:   「正直何もやっていませんでした、今から何かやったほうが良いでしょうか」

支援者:「では、仕事で何をやりたいですか?」
学生:   「何をやりたいのかよくわかっていません・・・」

この学生は、書くことができれば武器になるかもしれない大量の項目欄にちょっとした嘘や情報を膨らませて書く(学生の場合はサークルで幹事をやっていたとか、それほど本気でやっていなかったコンビニのバイトについて、「人が好きです」なんて膨らませて書いてきます)ことになります。就労パスポートでは使わないという選択肢を選ぶ可能性も高いですね。

つまり、大切なのはツールではなく、使う人の本質的な成長にあると感じます。

就労パスポートができて、一番問われるのは支援者の能力かもしれません。社会で活躍できる人材を育てられるのは、就労移行などの支援者が一番適任だからです。

“4ぶんの3メソッドに追い風が吹いている!!”

そう感じています。4ぶんの3メソッド を使うと、きっと就労パスポートを使えるようになりますよ。ぜひ一緒に学びましょう!

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