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在宅でも使いこなすK-STEPの実践報告

2020.04.28

report

僕が以前運営していた就労移行支援事業所のご利用者と1時間ほどお話をする機会がありました。

彼女は人とトラブルがあると責任感から自己否定が強まる特徴があります。現在の職場で就業して3年弱がたちますが、3月からコロナの影響で在宅勤務になりました。今回のレポートは、その彼女がどのように在宅の状態でK-STEPを使いこなし、先日発生したトラブルを乗り越えたかを紹介し、解説を加えたいと思います。
※実名などは記載しませんが、ご本人に記事にする許可を得て書いています(^^♪

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【K-STEPの実践事例の紹介】
就業して3年近く経ち、勤怠は一度も乱れずに就業している彼女ですが、症状が何も出ないわけではありません。就業中に彼女の特徴である、自己否定が顔をもたげることは今までも何度もありました。しかし、就職が決まった段階で、K-STEPの重要性を本人が上司だけでなく職場の仲間に説明し、毎日欠かさずK-STEPを使っての報告を続けていることが彼女をその度に救います・・・①

彼女の職場では2月ころから、多くの会社同様に小さなお子さんがいる方から在宅勤務になっていたようですが、その数はまだ少なかったとのこと。しかし3月に入った段階で自宅のネット環境の調査があり、その翌日には在宅勤務の指示が彼女にも告げられます。3月末に上司が変更になることも知らされていましたので、昔の彼女であれば心がざわついたかも知れませんが、心の準備ができていたため大きな動揺はなかったとのことです。・・・②

翌週から実際に在宅勤務が始まると勤務時間が変更になり、少し違和感はあったようですが本人は生活リズムを変えないという私の教えを守ってくれています。エネルギーが余り過ぎると無理に何かをやりたい気持ちが沸きおこる特徴もあるため、空いた時間に買い物に出たり、料理をしたりすることで暇になり過ぎないように生活の仕方を変えながら、エネルギーが余り過ぎないようにも工夫していたようです。
在宅でもK-STEPを使っての状態報告を続けます。チーム全員が在宅化する際にLINEのグループを作ったため、毎朝そのグループに状態を報告することから勤務をスタートしているとのこと。「今日は少し疲れがある」などに対して仲間から「無理しないでね」「何かあったら言ってください」などの返信がもらえるとのことです。・・・③

しかし、先日彼女は在宅での業務中に引き金(急激に悪化になる切っ掛け)を引きます。彼女の業務は2つのチームの間に立って双方をサポートすることですが、その2つのチーム間で少しギクシャクするトラブルがあった様子。片方のチームの担当者から「メールを送る際にはもう一つのチームをCCに入れないで欲しい」と、いつものメールと違う方法を取るように指示を受けたらしい。この時に彼女は「なぜ私が悪いように言われなければいけないの?」と思うと同時に、彼女の特徴である「自己否定感」が発動。その日の仕事はなんとか終え、不在だった上司に本件のメールを入れてから業務を終えました。
しかし勤務終了後に自己否定感が大きくなります。。。 ((+_+))「私が悪いの?」
これで悪化へと状態が低下していきます。

しかし、自分の特徴を理解している彼女は、このような状態になった時の対処策としていつも実行している自分の気持ちをメモに書き出すことで、相手は私が悪いとは言っていないこと、自分の特徴が自分を苦しめていることに気付き、そこから離れることができます。4時間かかったそうですが、夜はぐっすり眠ることもできたとのこと。・・・④

翌日の状態報告では「昨日引き金を引きました」「もう回復はしているが今後の対応も含めて少し話をしたい」と報告し、上司と別途電話でやり取りをします。上司の第一声は心配してくれていた「大丈夫?」でした。・・・⑤

その電話で上司は何があったのかを理解し、問題のあったチームとも話をしてくれ、今後同様のことがないように双方と調整してくれたために、彼女は2つのチームともより信頼関係が高まったと感じるようになったとのことです。・・・⑥

【解説】
① 状態が安定したらK-STEPは辞めるという話をよく聞きますが、僕はそれをお勧めしません。生活をしていると様々なことがあります。そんなにいつも良好であるはずがありません。ですから本当は何もないのではなく、感情を我慢していたり、見ない振りをしていたりするだけです。結果これが蓄積すると大きく崩れることに繋がります。
因みにマネジメントの基本のひとつは自分のメンバーの状態を把握することです。プロのアスリート選手でも毎日100%に調整することはできません。一般人である私たちであればなおのことですよね。マネジメントは自分のメンバーやチーム全体の状態を把握して、そのチームで今日のミッションをどのようにクリアするかをコントロールすることにあると考えられると良いなと思います。

② 変化が苦手な方への対応として上司や周囲の関りが上手です。いきなり伝えるのではなく事前にわかっていることを少しずつ伝えてくれていることで本人は心の準備ができていました。但しこれはご本人の特徴によって対応の仕方が違う場合があります。事前に大きな変化がある場合の知らせ方などはご本人と相談しておきたいですね。

③ LINEのグループでの共有は上手ですね。ほかにも朝礼や夕礼はzoomなどのWEB会議をつなぐという会社もあるようです。今は多くの便利なツールがありますから、皆さんに適した手段を使ってK-STEPの報告を続けられますね。

④ セルフケアトレーニングができている方は、このように特徴理解→回復対処まで自発的にできるようになります。その結果、三大生活基盤である「睡眠」をしっかりキープすることができていますね。大変素晴らしい事例です。

⑤ 本人はこの一言がとても嬉しかったと話しています。上司は本人が前日に出したメールを朝には読んでいて、返信もくれていたようです。特別なことではなく、仲間として大切にしてくれる環境や組織では、本人は安心して就業できます。

⑥ 業務の中でトラブルがあっても、本人も含めて一緒にクリアできると組織も本人もお互いにより理解が進み、強いチームになることができますね。上司も本人も大変上手に関わっていると感じます。


【本人の状態報告LINE】
ご本人が引き金の翌日に記載した状態報告のLINEを提供してくれましたので、皆さんにも共有します。
(本人や職場特定につながる情報は修正しました。また※は僕の解説付け加えています)

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おはようございます。
昨日17時過ぎに相手からのメール見て引き金を引きました。それなりにモヤモヤグルグルしたものの4時間で落ち着いた認識があり、ちゃんと眠れましたので軽度です。
しかし仕事の仕方を見直さないと続くので、お力を借りたいです。
元々○○さん(上司)にもccで届いているメールが発端なので、一度○○さんと話させていただき(10:30以降)、○○さんから●●さん(さらに上司)へお伝えいただく、という流れでお願いしてもよいでしょうか?昨日○○さんに相談メールを送った時とは現在は全く違う心境です。

それでは朝の状態報告です。
<睡眠>8時間、質:〇、覚醒:1回ありますが7時間は続けて眠れました。
<天気の影響>△(少しあり) 
※本人は気圧の影響を受けやすいため、毎日報告しています
<エネルギーの残量>昨日業務終了時:50 今朝:70
 ※残量が70~50良好、50~30注意、30以下悪化などの数値を職場と共有しています
<心の状態>今は安定していて、ケロッとしています。
<身体症状>頭重、首凝りは軽度あり。
 ※よく出る身体症状です
<その他>今朝は洗濯したので、心身共に起きています。
 ※在宅勤務にしてから就業前に家事をするのは日課です
<業務内容>10時~10:30まではメール処理等、それ以降で可能な時にご相談、そして
メイン業務の△△の作成をします。
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以上です。
ご本人もWithコロナ、Afterコロナの世界でのセルフケアの実践の参考になると嬉しいと情報を提供してくれました。
皆さんのご協力に感謝します♪

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