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給与額をあげるために

2020.06.22

know-how

僕は以前就労移行支援事業所の運営に携わっていました。
そのときの教え子のうちのお一人(Aさん)は、転職先でも僕に支援者を継続して欲しいというご希望があり、お受けしています。

Aさんが転職して1年が経過したタイミングで評価面談があるとのことで、就業先からお招きがあり面談にzoomで参加しました。部長と指揮命令の上司、さらに他に2名の方に僕が外部支援者として加わっているので、6名での面談でした。

1年前に上司とAさんが一緒に作成した業務目標のシートを見ながら、最初にAさんからこの一年の振返りと個別目標に対するコメントがあり、次に上司から同様に総括と個別の目標に対しての到達度合いと期待していることなどのフィードバックがありました。Aさんは客観的に自分のことを良く見ていて自分の成長ともっとできる部分に気づいており、また上司も良い部分とさらに期待したい点が明確で、とても歯切れの良い評価面談だなぁという印象です。

最後に、他に何か言いたいことはありますかと部長から話を振られた際に、Aさんは少し言いにくそうにしながら次のようなことを話しました。

「残業をさせてもらえないでしょうか。正直今の金額では貯金も難しく、将来の不安があります。障がい者は給与が安くなりがちです。生活保護と大差がないと感じます。私たちが生活できるレベルの給与に設定して欲しいという気持ちがあります。いきなりそのようなことはできないと思うので、残業ができるようにして欲しいです」

さらに残業ができる状態であることや、ドクターの見解、現在の業務で時間内に終わらないこともある状況なども追加してお話がありました。

それに対して部長からは「2つあります。一つは残業代を稼ぐための“生活残業”という考え方は当社では推奨したくないと考えます。もう一つは現在お任せしている業務を時間内で終了して欲しいと考えています。そのための能力のアップや工夫の相談は受けたいし、応援します。」というものでした。上司としてはもっともな回答だと思います。

Aさんは部長の話は理解はできるけれど、少し納得できない気持ちもあったかもしれません。僕がコメントを求められたので話したことを次に書いてみます。

「まず、Aさんは自分の不安やモヤモヤをこれだけ多くの人の前ではっきり言えることが素晴らしいと思う。障がい者であることからくる不安や意見は言わなければ相手は知ることもない。口に出してみることができ、それを聞いた側も受け止めたうえでコメントをする機会を作れたことにおいて、とても良い機会だったと思う。

でも、給与が上がるという結果は手に入らなかった。生活保護と比べたくなったということは、働いていても変わらないじゃないかという気持ちもあるのかもしれない。働いているのだからもっと欲しいというのは気持ちはよくわかる。

でも、お給与が高くなるために何をするのか。それは障がいがあってもなくても同じで、自分の市場価値を高めていくこと。

今日の評価面談を聞いていると、Aさんも上司もAさんが業務を通じて成長することを期待していて、そのために業務の進め方やマニュアルの見直し方、優先順位の決め方などの情報交換をしていた。その意味ではAさんは良い会社に就職できており、応援してもらえる環境を作れているなと感じた。

病気のことで社会に出るのが遅くなったから焦る気持ちがあるかもしれない。同世代の友達と比べてしまうこともあるだろう。でもできることは、一歩ずつ成長し、できることを増やしながら貢献できる力を高めること。数年前に就労移行を卒業したときは「毎日働けることから」だった目標が、「今は残業も厭わない」というところまで来ているし、できる業務内容もその量もスピードも格段にあがっている。僕はとても頑張っていると思うし、順調だと思う。まだこの会社で1年。まずはあと2年やってさらなる成長を目指そう。その時に違う選択肢が見えてくるかもしれない。」

と、こんな感じの話をしました。

一般就労でも障がい者雇用(特に精神の方)の評価はまだまだ低く、Aさんの気持ちはわかります。Aさんも転職する際には給与額のUPを条件に活動し、実際に結構UPはしましたが、まだ理想には届いていません。

給与が高い会社や業界に行くというのは普通の考え方ですから、何も問題ありません。
ただもう一つ覚えおいて欲しいのは、支援を受けている方の多くはスタート段階であったり、まだ成長の初期であるということ。給与だけではなく、成長できる環境を選び、自分の市場価値を引き上げることを目指すと良いでしょう。一般的な社会人でも、社会に出るのが22歳として29歳くらいまで(つまり6,7年)は給与額より、自分の市場価値を高めることに意識を置いたほうが、生涯所得は高くなります。

生活保護を受けていては市場価値は上がりにくいでしょう。だから働けるのに生活保護を選ぶなんてことはもったいない。できることを増やし、市場価値を上げていくと可能性が広がるのです。

皆さんが何歳であっても、同じです。
地道にコツコツと日々の成長を続けて(そのためのサポートを受けて)、お金を稼げる人になって欲しいと思います。

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