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LGBTと就労支援

2020.08.18

report

今ではLGBTという言葉は多くの方がご存じでしょう。LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)は、女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の各単語の頭文字を組み合わせた表現だということくらいは僕も知っていましたし、映画などでも同テーマが入っているものは多いため、彼らの困りや悩みも少しは知っていましたが、深く考えてはこなかったというのが本音です。

そんな中、友人つながりで「LGBT向けの就職媒体を運営されてる方が就労支援の面で課題を感じているみたいなので相談にのってあげて欲しい」とご紹介を受けたのが、
LGBT求人サイト「ジョブレインボー」を運営する星 賢人社長でした。

フォーブスが選ぶアジアで最も影響のある若者30人に選出されたり、ソフトバンクの孫正義育英財団の財団生だったりする星さんは、話して見ると非常にフレンドリーで笑顔が素敵な方です。

星さんのお話によると、ご支援者の中には多くのメンタル系の疾患(発達障がいや二次的な鬱の併発など)に悩む方も多く、彼らに継続的な就労支援をしたいが現在はその仕組みがないとのことです。「彼らが障がい者の就労移行支援事業所に通えたら良いと思うのですが、LGBTの方を受け入れられるでしょうか」というご質問を頂きました。

そこで障がい者就労支援の歴史や成り立ち、移行支援事業所の目的、課題などを話させて頂きました。

障がいのあるLGBTの方を受け入れても良いと考える施設職員や責任者は多いと思います。LGBTの悩みや困りを認識し上手に関わることのできる支援者も多いでしょう。
残る課題は他のご利用者にLGBT理解を促し、問題のない環境を作れるかどうかです。
これに関しては難しさが残りそうですね。

例えばLGBTの方が困りやすい「お手洗い利用」というテーマひとつを取り上げても、男女別のトイレが設置されている施設では、事前に他のご利用者に説明をしても「男性に見える方が女性トイレを使うのは困ります」などの声が起きることもありそうです。

多くの就労移行では様々な疾患や症状の方を受け入れているため、社会以上に多様性の高い空間になっていて、すべてのご利用者さんにそれぞれの困りがあります。特に利用初期は自分のことだけでもしんどいのに、他の方に配慮できるかといえば難しいこともあるでしょう。ですから、利用者間トラブルは無縁ではなく、完全なコントロールは難しいと思われます。

ただ、僕が就労移行支援事業をやっていた時に考えていたのは、「就労移行施設内の石コロを取り除き過ぎてはならない」というものです。

トラブルや価値観のぶつかりがあると、ご利用者にとってはつらく、苦しいものになることもあるでしょう。これを避けるために、極力ご利用者同士の接触を避けさせ、発生しそうな問題(石コロ)は支援者が先回りをして取り除くことで、問題が起きにくい環境を作ってしまうことがあります。

施設内にいる限り問題は起きにくいのですが、ご利用者はいつか外に出なければならないため、石コロが無い状態に慣れてしまったご利用者にとって、社会は生きにくい世界でしかありません。

ですから就労準備時には、段階的に社会に近い環境に適応できる力や、トラブルに立ち会った際に解決したり自浄したりする力を育むことが必要です。問題が起きたら当事者同士が(場合によっては支援者も同席し)冷静に、感情と事実を分けてお互いに共有し、その上でどのようにすれば良いか話し合いすることも珍しくありませんでした。

僕は以上のような持論を星さんに伝え、就労移行のご利用を希望するLGBTの方がこの考えに賛同でき、こういった支援ができる就労移行支援者がいれば利用は可能だと思うとお話しました。

僕が就労移行を運営していた時のご利用者にLGBTを認識できるご利用者はいなかったように思いますが、世の中にはサポートの実績もありそうですね。僕ももっとLGBTのことを考えてみます。この記事をご覧になってLGBTのご支援経験がある方や、今後受け入れを検討してみたいとお感じのご支援者がいれば是非メールをください。お待ちしております。

✉ n_kitamura@4bunnno3.com

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