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第3回 4bunnno3サロン

2020.08.25

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、第3弾を実施しました。

新たに3名の方が参加しました。医療系の就労支援やデイケアでの現場支援経験後に特例子会社のマネージャーをされている方、別な特例子会社の役員、さらに別な特例子会社の代表と新聞などでも見かける有名な方もお仲間に。人数はお二人欠席だったので僕入れて8名でした。

※右下のパーソルサンクス中村社長はカメラの調子が悪いらしく、好きにしていいと仰って頂いたので、以前一緒に撮った写真を張り付けたので正直浮いています(笑)


では今回も僕のセルフケア講義からスタートです。

【社会で多様な力を活かすための セルフケアトレーニング③】

初回にもお話しましたが、セルフケアトレーニングを「生活リズムを維持する力」くらいに理解されている方もいますが、実はカバーできる範囲はとても広いんですよ。一般的な職業準備ピラミッドで照らし合わせてみると、セルフケアトレーニングでは赤文字の項目を実現できます。就労準備ではセルフケアトレーニングを主軸に置き、不足する項目を別途ご提供頂くと良いでしょう。


ご利用者がトレーニングを通じて学ぶのは次の4つのスキルです。
①状態把握:どんな時も客観的に自分の今の状態が分かる力です。車の燃料計を思い浮かべてみてください。まだ大丈夫だとか、もう半分だなと一目でわかりますよね。では、燃料系が故障したらどうします?怖いですよね、急にガス欠になって立ち往生する人が続出です、きっと。。。でもこれ、感覚を鍛えると分かるようになるんです。今はまだたくさんあるとか、もうすぐなくなるとか。状態把握のトレーニングはこの見えない状態に気付き言語化する力です。セルフケアトレーニングの基本はこの力を身に付けることからスタートです。
②特徴理解:「状態が良くない」「気分が悪い」だけで終わらせず、その時にはどんなサインが出るか、どのような時に起こりやすいか、何はできて何が難しいか、その時にどんな配慮があれば活動しやすいかなど、その時々の状態での特徴情報です。知らないと不安が大きくなりますが、知っているだけで備えられたり、不安が少し和らぎます。ただし自分の特徴を理解するには時間が掛かりますので、じっくり取り組みます。
③回復対処:特徴理解しているその状態での回復対処行動を実際に実行する力です。知っていることとできることは別です。我慢を先行させやすい人が多いですが、回復行動を速やかに、自主的に実施できるようにトレーニングします。
④配慮相談:周囲との関係の中で必要な情報共有と相談の必要性を知り、自主的にコミュニケーションする力です。上司や同僚も事前に理解ができている環境では簡単なやり取りで相互理解が成立します。


これらのトレーニングを支える支援者にマスターして欲しいスキルは次の4つです。
①簡潔報告:初期のご利用者は報告がへたっぴが多いです。話は飛ぶし、だらだら話します。それを適切に報告できるように支援します。利用者・支援者のかなり多くが共依存関係に陥っていると僕は感じています。それはTPO関係なくすべて寄り添い過ぎる支援者の課題かもしれません。日々のセルフケアトレーニングは簡潔に必要な項目だけを1~2分で報告を目指すと、意外にできますよ。さらに言語化することや発信することで利用者の学びが広がります。
②質問:利用者が自己内省することを手伝うために質問を一つだけします。僕のお勧め質問は次の通り。
 ・理由:「この変化の理由はわかる?」
 ・具体:「これをもう少し具体的に教えて」
 ・時期:「この症状はいつから?」
 ・気分:「この症状があるとどんな感じ?」
 ・レベル:「その状態が10段階あるとして、今いくつ?」
これらを聞かれることで利用者は学びが広がりますし、課題も見つかります。
③配慮提供:そもそも配慮の定義を間違えている方が多いですね。配慮とはできないことを主張することではなく、「できるための工夫やサポート」のことです。できるだけ無いほうが良いと考えているのは根本間違いです。配慮要求を上手にできるスキルが大切なのです。もちろん配慮提供できる職場に就職することとワンセットです。要求しても「ダメ」という職場では機能しませんから。
④振返り:山登りと一緒です。黙々と頂上を目指すだけが良いことではありません。一息入れて来た道を振り返ってみると眼下に小さく見えるスタート地点、景色は変わり、頂上が少し近く見える・・・ また頑張ろうと思えますよね。気づきや学びをそのままにせず、時折整理しながら、何はできるようになったのか、何はまだ難しいのか一緒に確認します。

今回は以上でした。次回も続きをやりますね。


【ディスカッション】
1)適職を見出す
コロナ禍で障がい者が従事する職種が大きく変わりつつあるとのお話がありました。今までチームで取り組んでいた業務、例えば清掃やメール室業務などは在宅の普及と共に活躍の舞台が減りそうです。これは採用企業だけの課題ではありません。教育機関やトレーニング施設もこれらの流れを受け、職業準備段階にどのような業務スキルを育成するかという大きな課題になりそうです。企業と育成機関が情報交換をする当サロンのような仕組みはより重要になりそうだとのコメントを頂きました。一方現在日本ではメンバーシップ型雇用(会社に所属することが優先)ですが、今後ジョブ型雇用(専門性など自分の能力を発揮することが優先)に移行すると言われています。障がい者雇用はジョブ型で雇用されることも多いため、障がい者の活躍できるフィールドは広がるのではないかというプラスイメージのコメントもありました。

2)障がい受容ができていない方への対応
ご参加者の中にこの問題で悩んでいる方がいました。支援者としては「いま」「解決」することを目指したいと思ってしまいます。しかし、歴戦のご支援者たちからは「時間をかけること」「本人がその問題に向き合えるまで待つこと」のコメントが多く出ました。つかず離れずの距離を保ちながら、本当に困ったときにサポートできる関係は築くこと、ヒントだけは出しておくこと、そしてその時が来たら受容に向けて支援に取り組むことだそうです。こういった話のときに僕はよく話すことを少し書いてみます。問題「ありたい姿」「現状認識」のことを言います。現状認識は人によって違います。障がい受容ができていない人は「ありたい姿」と「現状認識」に差がなく「困っていない」と思っています(そう思いたいと考えている)。周りがいくら問題だと思っても、本人には問題がないのです。本人が困っていないと、支援はお節介になってしまいます。本人が困っていると認識し、そう言える状況が作れて初めて「任せて!お手伝いします」と言えるのですね。それまではじっくり寄り添いながら本当の心の声を待つ。お互い辛いですが、これが大切な時間になると思います。一方、手帳の有無や障がいの有無という二元論的な見方の限界も話されました。できないことが生まれてしまった以上に障がいというレッテルはご当人にとって心理負担が大きいものだと感じます。これらを変えていく取り組みももっと皆で話し合いたいですね。


【参加しての感想】
・ここで聞けたヒントで次の支援少に対して気が楽になった。
・現場のぶっちゃけ情報が聞けるのがこの場のすごさ。
・定着支援からサポートをするとセルフケア力や障がい受容が足りていない方を支援する機会があるが、これが大変。やり方や仕組みを変えていかねばと感じている。
・手帳の有無に関して、もっと違うアプローチが考えられそう。自分も少しバイアスがかかっていたかも知れないことに気づかされた。
・みのり多い会だった。そういえばみのりという「障がい×演劇」で活動するチームがあり、自己表現、コミュニケーション力の強化に一つの可能性を感じている。いろいろな情報を集めながら課題をクリアする策を探したい。
・企業の中で考えていることや話していることを就労準備の支援者の方や教育機関に発信すること、一緒に考えることが大切だと感じた。
・土曜日の午後にこうやって集まる人たちは本気の人たち、こういった仲間ができることが嬉しい。
・障がいをゼロ百でみるのではなく、困り感のレベル感として捉え、あらゆる人に困り感はあるという視点で物事を線引きしたいと思った。
・こういった情報や意見の交換をする機会がなかった。自分が考えていることを話して意見をもらったり、自分が考えていなかった他の方の話を伺い、これからの自分の仕事につなげていきたい。

今回のレポートは以上です。

第4回4bunnno3サロン 2020年9月19日15時スタート
ご参加ご希望の方はこちらをご覧いただき、手順に従ってエントリーしてください

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