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AI×データ時代の障がい者トレーニング
~シン・ニホンを読んで~

2020.09.10

report

僕は聴覚優位であることから、最近もっぱら読書はaudibleというサービスを使っています。プロの朗読者が聞きやすい声で読んでくれて、スピードも自由に設定できるので、10時間以上の本もサクサク読めていて、お気に入りです。

待っていた本がaudibleで発売されたので初日の8月26日に購入し、面白すぎて2週間ですでに5回目を再読している本があります。ヤフー株式会社のCSOをしながら慶應大学の教授も務め、国の総合科学技術イノベーション会議などにも参画している安宅和人氏が書いた「シン・ニホン」です。

AI×データ時代に乗り遅れた日本の現状を国内ではもっともよく知る一人の安宅さんが、解りやすい言葉で教えてくれます。最初は読んでいると、日本のヤバさが身に沁みます・・・

しかし、その後如何にこの状況を打破するかのアイデアが具体的に語られるため、読むと勇気が沸き、具体的に行動したくなる素晴らしい本です。実際に僕は高校受験の数学をスタディサプリで始めました(笑)

さて、今日ここで書いてみたいのは、僕が推奨するセルフケアトレーニングは実は思っている以上にすごいのではないかということです。障がい者就労定着に携わって10数年ですが、当初からこの世界の常識は危険だと感じたことがあります。それは職能分野が単純作業に向いていることです。
2012年ごろ遊びに行ったキューピーの特例子会社「キューピーあい」の当時の庄司社長から、「単純作業はどんどん機械化されています。彼らの新しい可能性を見出すことが大切です」と教えて頂いたことから、僕は就職した後も彼らがAIに仕事を奪われることのないトレーニングを考え続けてきました。福祉事業者からもAI時代に何をトレーニングすると良いでしょうと質問を受けることがありますので、このことは職業準備のひとつの共通課題なのだと思います。

同著の第3章に「求められる人材とスキル」とあります。
まずは、不必要にAIを恐れすぎないこととあります。車が発明された当初も歩いたり馬に乗ることしかなかった時代には恐怖だったのかもしれませんが、車を自分で作れなくても多くの人が自動車免許を持ち、簡単な整備はできるようになっています。AIも同じでAIを使いこなす人が必要になると考えると良いでしょう。

ではその際に必要なスキルは何か。同著の言葉を引用すると
“データ×AIの力を解き放てば、情報の識別、予測、また目的が明確なことの実行系はことごとく自動化される。・・・これらの業務から解き放たれてなお、人間に残る役割がある。自分なりに見立て、それに基づき方向を定めたり、何をやるかを決めること、また問いを立て、さらに人を動かすことだ。”

これは何となく考えたことがある人は多いでしょう。いわゆる人間力ですね。僕が良く言う言葉では「自分で考えて、判断し、行動すること」であり、教育時にはこういった人を育むことを根底に置いてきました。

ではどうすればそういう人を育てられるか。同著で書かれていた知的活動の具体的なステップイメージに僕は吸い寄せられました。僕の言葉で少しまとめてみます。

 1)知覚経験の抽象化:言葉にしにくいものを感じること
 2)コンテキストに応じた意味判断:今感じていることの意味を判断すること
 3)言語的な思索:自分なりの言葉にして話してみること
 4)新しい知的理解の創造:自分の知覚したことの仕組みなどを理解すること
 5)課題を見極め解決する:知覚したことに関する対処をすること
 6)質的な軸を整理する:知覚したことに関する要素をつなげて整理する

まだ続くのですが、ここまでにします。
さて、如何ですか?これってセルフケアトレーニングと一緒だと思いませんか?

自分の言葉にならない症状を感じ取り、その意味を捉えながら、言葉にして報告する。そして症状に伴うサインや原因を探りながら、その際にできることやできないことを仕分け、対処行動を実施し、必要配慮を要求する。

セルフケアトレーニングを経た人たちは社会で高い評価を受けていると感じます。それはセルフケアスキルが社会との共生において有効だからと考えていましたが、もしかすると彼らはいつの間にかデータ×AI時代に活躍できる人間として育っていたからなのでは!

考えすぎでしょうか。でも、間違いなく知性を磨く効果がありそうだと思っています。
今一度、セルフケアトレーニングを推進することに意味を見出すことができました。これからも本トレーニングを世界中に届けていきたいと思います。

あ、ぜひシン・ニホン読んでみてください。

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