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第11回 4bunnno3サロン

2021.03.04

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、第11弾を実施しました。
今年から午前中に時間帯を移動したのですが、参加者数が減っているぅ((+_+))
4月から元の時間に戻すかどうか悩んでいます。。。

いつも通り冒頭は全員で近況報告をしたあと毎回僕の講義ですが、共有しやすいノウハウである「セルフケアトレーニング」と「キラパタ」の基本編はこれまでで凡そ終了したので、今回は初めてロープレをやってみることにしました。

実施するのは就労定着において、大変有効な策である「活躍のアイデア会議」です。最近ご依頼頂く研修の中でもっともご要望が多いのですが、研修では時間に限りがあったり大人数のため僕がファシリをできないという難点があるのですが、今回は贅沢に参加者の5名でやり切って頂きました!

【精神障がい者が活躍できる職場のつくり方 キラパタ④】
「活躍のアイデア会議」

活躍のアイデア会議は、本人、同僚、上司に本人の就労定着支援者も加えて、本人が活躍できるための作戦会議のことで、新しく障がいのある方を採用する際に実施するとより効果的です。

僕が企業のコンサルをしていて気づいたのは、障がい者の上司や指揮命令者に就任した方が 一人で頑張り過ぎている という事実です。これは決して褒め言葉ではなく、悪い意味です。「どんな仕事をやってもらおう」「どんな風にマネジメントしよう」「あれはどうしよう、これは・・・」社内で誰にも相談できずに頑張っている上司や指揮命令者をたくさん見ました。そこに僕が現れると、彼らは僕にこう尋ねます。

「こういう仕事を準備したのですが良いでしょうか?」
「こんな風にマネジメントしようと思いますが、大丈夫でしょうか?」

僕の回答はいつも一緒です。
「それは僕に聞くことではなく、採用したご本人や実際にマネジメントする指揮命令者、他の同僚の皆さんと相談したほうが上手くいくと思いますよ」
皆さん、障がい者雇用というものになると、障がいのある方や仲間に相談して良いと思えなくなり、独りよがりになっていくようです。ですから、機能するチームを作ることが大切です。障がい者雇用では負担は分担するという教えを今までもしてきましたね。

ではどうするか。
具体的に採用した方の困りをひとつ取り上げ、その困りを乗り越えるためのアイデア出しを皆で実施します。この際のポイントは次の2つです。

1)できるだけ多様な方に参加してもらう
2)「本人の努力」「周囲のサポート」「環境の工夫」の3つの視点で考える

特に2)は覚えて置くと良いですよ。
今から企業の方を少~しディスりますので、お許しください。
企業の方は「うちはワンチームだ」とか、「ダイバーシティを目指しています」と言う割に、何か実際に問題があると「それは君の問題だ、自分で解決して下さい」と言いますよね。あれってなんだかなぁと思っています。

僕はダイバシティ・チームとは「チーム内の誰かの困りを自分ごとにできるチーム」と解説します。

たとえ話をしてみますね。
ワンチームでわかりやすいのが、自分自身です。自分の中には足も手も眼も口も付いていて、一つの体や人格を形成しています。
さて、皆さんが歩いていて右足のつま先をタンスにぶつけたとしましょう。痛そうですねぇ(汗)その時にワンチームである右手や眼はどうするでしょうか。「それは君の問題だろ」なんて言うでしょうか。
眼はそこしか見えなくなり、右手も左手もすぐに右足の爪に駆け付けてさすり、口なんて役に立つかどうかわかりませんが、大丈夫大丈夫・・・と呪文を唱えますよね(笑)
これが僕のイメージするダイバーシティ・チーム像です。自分も無関係ではなく、チームの誰かの問題は自分の問題でもあると考えられるのです。

話を元に戻します。
アイデアを「本人の努力」だけにせず、「周囲のサポート」「環境の工夫」も加えて考えることで、自分ごとにするというシステムが機能し始めるのです。

さて、ロープレの設定はこうです。
①参加者の5名は同じチームで就業していることと仮定する。
②そこに新たに佐藤さんという方が入社する。
③佐藤さんには次の困りがある。
「不安症があるため、人に話しかけることが不安です。自分から話しかける必要があるとわかる場面でも、できないことがあります。」
以上です。

<1 個人でアイデアを書き出す>
まず、皆さんに個人ワークで佐藤さんの困りをクリアして、活躍できるようにするためのアイデアを「本人の努力」、「周囲のサポート」、「環境の工夫」の3つの観点から自分の意見を書き出してもらいました。

<2 活躍のアイデア会議 ①全員で書いたことを共有>
その後僕がファシリ役をして活躍のアイデア会議を実施しました。
まずは、アイデアの共有です。今回皆さんから出たアイデアは以下の通りでした。

<本人の努力>
 ・本人から話す努力をする
 ・どこまでならできるか考えてもらう
 ・どんな場面ならできるか考えてもらう
 ・誰とならできそうか考えてもらう
 ・ちょっとした会話を普段からするようにする
 ・聞きたいことはまず紙に書きだす
 ・聞きたいという視線を送る
 ・なんでも良いので、聞きたいことを表現する 

<周囲のサポート>
 ・普段からちょっとした会話や雑談をする
 ・定期的な面談をする
 ・本人からの希望や要請には可能な限り応じる
 ・困りを開示された際は一緒に考える
 ・近くを通った際にはひと声かける
 ・目の端で気にしておく
 ・気になったことは同僚間でメモを共有する
 ・時々声を掛ける

<環境の工夫>
 ・声に出すのが難しい場合はチャット・メール・筆談もOK
 ・発信に必要な準備時間を認める
 ・声を掛けてよい担当を複数設定しておく
 ・定期面談を設定する
 ・声掛けをするタイミングや内容を設定する
 ・話しかけるための補助シートをつくる
 ・質問があるという意思を示すカードを作る

<2 活躍のアイデア会議 ②ディスカッション>
全員が発表した後、このチームで実際に採用する案を話し合いました。
意見を交換する中で今回のメンバーが気付いたのは、このチームには実際には佐藤さんがいないということでした(これに気づくのは実はすごいことです!)。そこで、この場では勝手に決定せず、①佐藤さんの意見を聞くポイント、②佐藤さんに提示したいアイデアの2つにまとめていこうという見解になりました。

<2 活躍のアイデア会議 ③チームとしての決定>
①佐藤さんの意見を聞くポイント
<本人の努力>
 ・どこまでなら、どんな場面なら、誰とならできそうか本人の意見を聞く

②佐藤さんに提示したいアイデア
<周囲のサポート>
 ・普段からちょっとした会話や雑談をしよう
 ・定期的な面談をしよう(頻度や必要時間は本人と相談して決定する)
 ・定期面談で伝えることや共有するために、周囲の人が気づいたことをメモする
  スプレッドシートをつくることを認めて欲しい

<環境の工夫>
 ・口頭で話すのが難しい場合、チャットやメール、筆談など本人がやり易いものを
  認める用意がある
 ・質問したいことを表現するカードなどを準備する用意がある
 ・発言に時間が掛かる場合は、どのくらいの時間が必要か聞いて認める用意がある
 ・発言しやすいようにオリジナルの補助シートを一緒に作る用意がある
 ・指揮命令者が仕事の指示をした場合、30分ほどで一度状況を確認する

<3 活躍のアイデア会議動画を見る>
僕が長年関わらせて頂いている特例子会社の湘南ゼミナールオーシャンさんに依頼して作って頂いたアイデア会議の動画を皆さんに見て頂きました。この動画がメチャ秀逸です。実際に佐藤さんやその支援者の方がいる中で、どのように会議が進行するか、どんなことに気づくか、何が大切か、いろいろと考えさせられます。

<4 意見感想の共有>
今回の会議ロープレと動画の視聴を経ての感想を伺いました。
 ・本人を交えた会議は今までほぼ経験がない。今までは勝手に周りが決めて本人に
  押し付けていたことに気づいた。本人の意見も交えながら一緒に考えることの重
  要性に気づいた。
 ・本人の成長や変化に応じて、見直すような機会があると良いと感じた。つまり
  一度きりではなく、何度も実施すると良さそう。
 ・会議を成立させるためには、本人に参加意識や発言意識があること(上手く話せ
  なくても良い)、また上司や同僚に向き合おうという意識があることが大切。
  今までこの場で学んできたが、本人にはセルフケアトレーニングが重要であり、
  就業環境にはラインケアの意識があり、それが結びついていることも重要だと
  改めて感じた。
 ・本人の困りを本人だけが頑張るのでもなく、周囲だけが負担するのでもなく、
  一緒に解決するチームが出来上がるのが素晴らしいと思った。
 ・会議の場で本人が難しい要求をしてきた場合にどのように進めるかなどの経験も
  してみたい。
 ・支援者をしているが、企業と一緒にこのような会議をするという考え方が無かっ
  たので、大変勉強になった。いろいろと考えさせられた。どうやって企業を巻き
  込むかが大切だと思う。
 ・現場では障がい者の担当者(指揮命令者)になった人だけが頑張っているケース
  をよく見るが、その方は非常に大変そうだと感じていた。障がい者雇用を如何に
  大変なものではないようにしていくかという観点で、この会議は有効だと感じる。

如何でしたでしょうか。実施するメンバーが違うと出てくるアイデアも変わりますし、実際は困りの内容は多種多様ですから、やるたびに違う気付きがありますよ。
やってみたい! と思ったらお手伝いしますので是非お声がけください。

今回のレポートは以上です。

今後の4bunnno3サロンの日程は以下の通りです。次回の第12回までは開催時間は午前10時からです。それ以降は、午後1時30分からに変更してみようと思います。

第12回4bunnno3サロン 2021年3月27日 午前10時
第13回4bunnno3サロン 2021年4月17日 午後1時30分
第14回4bunnno3サロン 2021年5月15日 午後1時30分
第15回4bunnno3サロン 2021年6月5日 午後1時30分

ご参加ご希望の方はこちらをご覧いただき、手順に従ってエントリーしてください。
既存・新規いずれもご参加連絡お待ちしております。

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