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多様な人たちが輝くためのパターン・ランゲージ
④「No.2 まずは出してみる」

2021.06.14

know-how

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今回のキラパタ解説は「No.2 まずは出してみる」です。
これは 受け入れ準備パターン の B)入社前のひと手間 というグループに属します。B)グループには、実施することで障がい者雇用におこりがちな問題を排除することができる3つのパターンが揃っています。障がい者雇用でもっとも厄介なのは、トラブルです。採用後のトラブルは大きなコストとして跳ね返ってきますので、これは是非とも避けたいですね。最初に少しの投資をすることで、問題発生のメカニズムを抑え込むことができるのが、このB)グループのパターンです。キラパタの要諦はここにあると言っても良いでしょう。

採用後に起こるトラブルの一つ目の要因は、雇う障がい者にではなく受け入れる組織の中にあります。経営者や管理職の方は、障がい者雇用の取り組み意味を経営視点で捉えることができるため、経営判断として「やる」と決まれば、その決定に従うことができますが、現場はそうはいきません。もう少し感情的な視点が強いものです。つまり「上手くは言えないけど、なんとなく嫌」なのです。

しかし、障がい者を排除するような考え方の持ち主と思われることも嫌なので、なかなか言い出しにくいですから、隠れて次のような会話が行われています。

「社長が障がい者雇用やるって言ってたでしょ。いいことかも知れないけど、現場にとっては迷惑だわ」
「そうそう、なんかよくわからないけど、障がい者と一緒に働くってイメージできないよね」
「課長に言ってよ」
「嫌だよ、なんか悪者みたいだもん」
「やるなら他の部署でやって欲しいね、うちはとりあえず無理」
「もし、実際にうちの部署でやるってなったら、関わらないようにしようか」

なんて話をしていることを、管理職は知りません。たとえ話をすると、畑に作物を植えるのと一所で、いくら良い苗を手に入れても土が良い状態でなければ、苗は枯れてしまいます。ではどうしますか。そうです、最初のひと手間は土壌作りです。

まず、安心してください。現場の感情の大半は無理解から来ています。明確な根拠があって嫌なのではなく、なんとなく嫌であることがほとんどです。

多くの嫌な理由はこんな感じです。
 ・障がい者(精神障がい者)って怖い
 ・どう関わっていいか分からない
 ・精神障がいの人は安定しない(社内に休職を繰り返している人がいる)

雇用前に、これらの問題の源泉である無理解をクリアしておくだけで成功率が大幅に高まります。では具体的にどうするかですが、一言で言えばガス抜きです。障がい者雇用に後ろ向きな気持ちを出して良い機会を作ります。しかし、彼らに「言っていいよ」と言っても、皆で目配せし合って、なかなか話してくれません。誰もが悪役になるのは嫌なものです。そこで、上司が口火を切ります。ただの悪口にならないように、障がいに詳しい人に立ち会ってもらうことをお勧めします。また、他人の意見を否定しないという一つだけのルールを設定して始めます。

課長「社長が障がい者雇用を始めると言った時、正直ちょっと「不安だなぁ」と僕は思ったんだけど、皆は素直にやろうと思えたかな。あ、因みに社長には内緒だよ。」
社員A「え、課長もそう思っていたんですか」
課長「うん、障がい者と言われても良くわからないし、不安があるよ」
社員B「私も不安です。今は仕事が忙しく、障がい者雇用をしている場合ではないと思います」
課長「なるほどね。今日は専門家の方にも来てもらっているので、皆の不安に対して正しい意見や情報をもらおうと思う。不安なまま進めてもうまくいかないからね。」

なんて具合に会議をします。不安はホワイトボードに書き出すと良いですね。自分だけが不安なのではなかったということが分かると、ある意味チームがまとまります。これも大切な通過儀礼です。最初は嫌という意見が多いと思いますが、その理由を紐解くうちに、無理解であったことや思い違いであることに気付きだします。
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少し不安が弱まってきた段階で
課長「因みに、逆に障がい者雇用に興味や関心があった人はいるかな」と聞いてみると、意外に高い確率で手が上がります。障がい者は国民の8%が該当し、一生のうちに精神疾患を患う方は5人に1人と言われますから、家族や身内に該当する方がいるのは珍しくありません。「彼らがもっと生きやすい社会になるといいな」「でも何をすれば良いか分からない」と思っている方は多いのです。その方にとってはチャンスが来たと感じているのです。

不安はどこまで行ってもゼロにはなりませんが、言いたいことを言えたこと、上司に聞いてもらえたこと、自分の無理解もあったと気づいたこと、仲間の中には少し前向きに捉えている人もいること。これらがテーブルに乗った時に、人は「まぁ、いいか」と感じます。
「まだよくわからないけれど、社会や当社にとって必要なことであることも分かるし、まずは始めてみよう」という空気感にたどり着いたら成功です。

おさらいです。
・管理職の方と、メンバーでは価値観や視点が違うので、違うアプローチが必要
・障がい者雇用はチームが一体になると難易度が大きく下がるため、少しの投資で土壌の整備をすることが大切

ところでここで培った土壌は、障がい者雇用だけに有効でしょうか?
チームの土壌が豊かになることで得られるメリットは、本業にも大きく影響しますね。障がい者雇用に前向きになることは、実は組織の活性化にもつながることなのかも知れませんね。

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