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第19回 4bunnno3サロン
「突発面談のマイルール」

2021.08.31

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、
第19弾を実施しました。

前回の4bunnno3サロン アップデート会議を受けて、事前に議論テーマを決めて実施することにしました。
今回のテーマは「突発面談のマイルール」です。

雇用現場でも、福祉支援の現場でもメンバーやご利用者の方から「今すぐ話を聞いて下さい」と予定になかった面談(これを突発面談と呼びます)を要請されることがあります。しかし、この対応にはいくつかの問題があります。
 ・メンバーやご利用者(相談者)は予定していた業務やプログラムができないこと
 ・上司や支援者(相談を受ける方)も予定していた職務ができないこと
 ・突発面談を繰り返しても多くの問題は変わらないこと

一方、突発面談の中には生命の危機や、緊急性の高い相談が含まれる可能性があるため、安易にNOというのはリスクがあるのも事実でしょう。この問題で悩んでいる支援者は多いようで、ご相談を受けることも多いですね。

実際、僕も就労移行支援事業をしていた当初は本人の危機感や強い焦りをそのまま受け取り「では、話を聞きましょう」と即時対応していた時期がありましたが、今ではこの対応の仕方に警鐘を鳴らしています。

現場経験が豊富なご参加者が多かったため、僕の意見も組み合わせて本テーマで議論した内容を以下にまとめてみます。

■突発面談を希望された際の対応の仕方
まずは即時対応をする必要があるかどうかの判断が必要と言う意見が多かったですね。さらに相談内容によったり、相手との信頼関係(価値観の共有間)が高かったりすればその場での立ち話程度で済ませたほうが速いというケースもあるようです。また、ご本人にとっての問題をすぐに外に出すことが必要な場面もあれば、しばらく問題と本人を向き合わせる環境を作ることで、本人の中に自浄作用を育てるという考えもあります。ゆっくり自浄作用を育てると、     
 問題→パニック→「聞いてください」 ではなく、
 問題→まずは落ち着こう→深呼吸→意外に平気
という、認知行動ができるようになります。ご本人の育成ステージを意識して関わることは大切ですね。

1)内容を見極める1(緊急事態であるかどうか)
2)内容を見極める2(自分が対応すべきか、職場では業務に関係するかなど)
3)上記2点において、双方YESの場合は今できることで突発面談を設定する。いずれ
  かNOの場合は、丁寧に対応しつつも今(私)が対応すべきテーマではないことを
  伝え、他の選択肢を提示する、例えば「〇時に△分間であれば話を聞けますが、
  如何ですか」と回答し、突発面談は設定しない。
4)本人の合意が取れれば、立ち話にすることで双方負担を軽くする。(別途場所や
  まとまった時間を取らず「ここで聞いてもいい?」と確認して端的に実行する)
5)業務に関する話の場合はその場で即レスをする

■突発面談を避けるための工夫
突発面談の主な要因は相談者の心(喜怒哀楽など強い感情)の状態に起因するものが多いため、その心にアプローチする方策が別途必要ですが、今回はその手法は扱わず、突発面談に特化して考察をします。突発面談の本質的な問題は時間や労力のコストが大きいことです。運営上考えたいのはこのコストを如何に引き下げるかですね。

1)面談は事前予約制とし、時間と対応希望者、相談内容などを申請する(申請用紙を
  準備する)
2)デイリーでの日報や朝の状態確認などで、本人の中で問題が蓄積しないように、
  また自己主張の弱い人でも状況を把握できるよう環境整備をする
3)情報収集→支援者間情報交換・会議→先手アプローチ という支援環境を構築する
 (突発面談は後手のアプローチであるため、少ないほうが良いと考える)

■面談ルールの整備
面談ルールがないと、面談は支援者の個人プレーになります。「チームプレー」になり、効果が倍増し、コストは軽減するための、面談ルールやガイドラインなどを考えたいものです。内容をまとめるだけでは分かりにくいため、それぞれ少し解説も加えてご紹介します。

1)突発面談対応は組織風土や文化が大きく影響していることを知る
  ・突発面談対応を好む支援者もいるが、その構造には共依存がある
  ・突発面談を繰り返しても、ご本人の問題の多くは解決しないため、主力ではなく
   補助策として捉える
  ・問題対処の主力としての組織内価値観を言語化する

<解説>
突発面談は組織の価値観や考え方ひとつで大幅に減らすことが可能です。実は面談対応は支援者にとって大変魅力的な業務です。ご本人の悩みに寄り添い、一緒に解決を図るという「支援している感」を覚えやすい業務だからです。しかし、そこには“共依存”があり、また突発面談を主軸の解決策にするとその時はクリアしても、他のテーマで(場合によっては同じテーマで)再度突発面談を対応し続けることになります。面談という他者の支援ありきで生きるのではなく、本人が自分の足で立ち、歩ける支援を目指したいですよね。例えば、僕が主軸として教える価値観に「いまここ」があります。突発面談を希望したくなる本人の脳内は「いま」ではなく「過去」の出来事に対する感情か、「未来」への不安で埋もれています。また今であっても「ここ」という自分のことではなく、「あっちやそっち」の他人に対する感情(なんであの人は・・・など)です。人は「いまここ」しか生きられない、心が迷走したり、翻弄されたりしている時は「いまここ」に戻ろう!という価値観を徹底して教えます。そうすると、面談時に本人は話をしているとだんだん冷静になり、自分から「必要なのは“いまここ”ですよね」と言ってくれるので、「うん、そうだね」とだけ言って終了することも多いです。これを繰り返すうちに、心が乱れても面談に来る前に自分で“いまここ”になれましたと、日報に書いてくるようになります。面談を主軸にしないという考え方をご理解頂けたでしょうか。

2)突発含めて、面談をする目的を言葉にして組織内で共有する
  ・希望者だけではなく、面談をして欲しくても言えない人もいることを考慮する

<解説>
面談は要求されたら対応するという価値観があります。社会人なのだからそれが当たり前、という考え方もありますが「障がい」という文脈ではあまり良策ではないでしょう。声高に主張する人と、あまり主張しない人でどちらが困っていると思いますか?僕の経験で言うと、どちらも同じ程度困っています。ですから ①定期面談、②申請面談、③突発面談 と3つの面談があるとすれば、①を低コストでデイリーに運用できる仕組みを構築することをお勧めしています。そして③は徐々に減らし限りなくゼロに近づけ、②は希望があれば対応します。情報収集や問題解決の主軸は①とし、業務に組み込むことで計画的、かつ組織的に運用することで、この情報が組織力を引き上げるように設計したいですね。

3)面談のガイドラインをつくる
  ・面談の種類:定期面談、申請面談、突発面談など
  ・対応可能内容
  ・対応所要時間
  ・対応者
  ・対応時のツール(申請書、面談の手引き、面談記入シートなど)
  ・手法(対面、オンライン面談、チャット、電話、メールなど)
  ・対応不可時の対応
  ・面談の記録
  ・面談内容の支援者共有、内容によっては支援会議までの流れ

<解説>
面談を希望する方、面談対応する方、その他の周囲の方で面談の事実や面談に対する考え方が共有されていないことが生む問題を見ることがあります。雇用現場で伺うNGケースには次のようなものがあります。   
 上司「あれ、Aさんはどこに行ったの?」 
 同僚「人事課長に面談してもらっているみたいです」
 上司「え、聞いてないんだけど・・・」
このケースでは人事課長の行動に問題を感じるかと思いますが、僕は課長個人の問題ではなく面談を個人の価値観で実施する仕組みになっていることにあると考えます。人事課長は上司にご本人から面談を希望されている事実を共有し、事前に上司から情報を集めることで面談の精度を上げられそうです。また面談後の情報共有もスムーズに進みそうな気がしますね。これを人事課長のスキルに任せず、組織で面談に関する共通見解やルールを整備すると良いですね。

本日のレポートは以上です。


<次回予告>
第20回4bunnno3サロン 2021年9月18日 午前10時00分
テーマ:就職前の企業での実習
福祉支援者はご利用者育成の最終段階である企業実習で何を支援しておきたいのか。実習受け入れ企業は雇用前に何をチェックしておきたいのか。それぞれの思惑が交差するこの時、双方が何を考えているのか、相手のホンネ知っていますか?
そこで第20回の4bunnno3サロンでは、就職前の企業での実習について情報交換をします。今回から時間帯を午前に戻しますのでご注意ください。

 ~情報交換内容~
  ・支援者が企業実習の際に利用者に伝えていること
  ・受け入れ企業が実習でチェックしているポイント
  ・支援者が実習企業に期待していること
  ・受け入れ企業が支援者に期待しているポイント
  ・より良い企業実習実現のためへの提言

年内の4bunnno3サロンの日程は以下の通りで、テーマは未定です。ご希望のテーマがあればお寄せください。

第21回4bunnno3サロン 2021年10月9日   午前10時00分
第22回4bunnno3サロン 2021年10月30日 午前10時00分
第23回4bunnno3サロン 2021年11月20日 午前10時00分
第24回4bunnno3サロン 2021年12月11日 午前10時00分

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