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ありのままでいい という言葉

2020.08.12

know-how

今回は、先日の4bunnno3オンラインサロンで話題になった「ありのままでいい」という言葉について書いてみます。

企業で働いていたころにはあまり聞かなかったこの言葉、福祉に関わるようになって頻繁に耳にするようになりました。初めて聞いたときはビリー・ジョエルの「素顔のままで」みたいなイメージかな、と思ったりしていました。

「ありのままでいい!」
なんてすばらしい響きの言葉でしょうね。こう変わりなさい、と言われるより勇気が沸くような気がします。

でも、オンラインサロンでもありましたが、この言葉の本質が伝わらずに使われるケースもあるようです。たとえば

・人と話すのが苦手だけど、ありのままでいいのかな?
・自分の好き勝手にしていいってこと?
・今のままでいいなら、努力しなくていいよね?

「ありのままでいい」という言葉が都合よく解釈され、言ったり聞いたりすることが多く、僕は「う~ん・・・」と思うこともしばしばでした。

僕は「ありのままでいい」を、自立の言葉として捉えています。
アナと雪の女王の「Let It Go(ありのままで)」もそういったテーマでしたね。

幼少期やメンタルの疾患には自立しにくくなるという共通点があります。自立していないと、他人と自分の境目が分からなくなり、例えば友達から「そんなものが好きなの?」と言われたら、そのものが好きではなくなったりします。人から褒められても必要以上に「そんなことないです」と受け入れられません。

この裏にあるのはバウンダリーの問題です。
バウンダリーとは、“目に見えない、安全な人間関係の境界線” のことで、他人と自分は違う人間であることを認識できることなのです。

そんなの当たり前だと思うかもですが、ちょっとチェックしてみましょう。
 □ 体に触られて嫌な時は、それを主張して良いと思える・言える
 □ 自分のお金だから、常識の範囲で使って良いと思える
 □ 自分の部屋に友達はいいけど、父親は入って欲しくないと思える・言える
 □ お手伝いをした際に思ったほど相手が喜んでなくても「仕方ない」と思える
 □ 友達が怒っていると深く関わらずそっと見守れる(なんとかしようと思わない)
 □ 友達が悪いことをしたら優しく指摘する(声を荒げない、変えようとしない)
 □ 自分のことを好きと思える・言える

全部YESの人はすごいですね。僕は耳が痛いものも含まれています(;・∀・)

「ありのままでいい」というのは、第一にバウンダリーを自分にも相手にも認められるということなのだと思います。

福祉は人に深く関わるお仕事ですので、この考え方と現実の行動がずれてしまうこともあるでしょう。その過程で「ありのままでいい」という言葉が拡大解釈されて使われてしまうのかもしれませんね。


次に、自分の存在意義 ~自分はなにをしたいのか~ を知っていることが重要だと思います。

今まで見た中で辛かったのは「この人は障がい者だから、こういったことはできません」という発言をする支援者の存在です。もちろんいろいろ努力してきた上でのことかも知れませんが、正しくは「今は難しい状態にある」なのであって、可能性を完全に閉ざす必要はありません。

ここで大切なのは、ご本人の ~自分はなにをしたいのか~ です。
本人がやりたくないというのであれば、「今は」その時ではないと考えてよいでしょう。しかし、様々な経験を通じて成長してきたご本人が「挑戦してみたい」と思えたときに、「この人は障がい者だから、こういったことはできません」という発言は「ありのままでいい」を棄損していると感じます。

支援者や周囲が考えたいのは、可能性を閉ざす言葉ではなく、
 ・こういうリスクはあるかもしれないと予見する
 ・こういうサポートがあるとやりやすいかもとアイデアを出す
 ・スモールステップで最初はここを目指そうとゴールを決める
など「どうやったらできるか」を考え、準備することだと思います。

ご本人の「ありのままでいい」は、きっと自分で自分を褒められることだと信じています。僕はこれからも人の可能性を広げるお手伝いができると嬉しいです。

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