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第2回 4bunnno3 サロン

2020.08.04

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロンを先週の土曜日に実施しました。

就労・定着の最前線で活躍する3名のリーダーの皆さんが新たに参戦です。
行政から受託し多くの障がい者を育成する支援者、大手就労移行支援事業者の地域連携コーディネーター、大手特例子会社でKSTEPを推進するマネージャーなど、顔ぶれがすごいです!

最初は、前回の続きで僕のセルフケア講義を実施しました。前回長すぎたので、今回のシートは1枚だけにして質疑応答含めて40分でした。1枚なのに40分(笑)
では、皆さんもご覧ください。

【社会で多様な力を活かすための セルフケアトレーニング】

セルフケアトレーニングで扱う7つの要素の解説をします。
「気分」
「今日はどんな感じ?」「What's up?」などと聞かれた際に、「いつも通り」とか「Nothing much」などと回答する際に、人は気分で回答しています。簡単に言うと深くは考えていないのですね。余程悪かったり何かすごいワクワクしていれば返事は違うかも知れませんが、多くの場合は「普通」なんです。だから、気分を聞いても多くの情報を得ることはできません。

「サイン」
気分の裏にある、強めの感情や身体症状です。気分が先だって感情や身体症状に及ぶ場合もあれば、逆に感情や身体症状が気分を作ることもあるようです。「イライラする」とか「顔がピクピクする」とかサインは人それぞれで、良好なときに出るサインと悪化時に出るサインでは違います。セルフケアトレーニングの第一歩は、出現しやすい自分のサインを認識することです。


「三大生活基盤」
疾患以外で気分やサインにもっとも影響を与えるのが生活習慣です。セルフケアトレーニングでは、睡眠や食事・運動、そしてストレスとの付き合い方といった3つの生活基盤についても学ぶことで、生活スキルを高めます。

「癖(クセ)」
生活習慣を乱す本人の特徴です。大抵良くない要素なのでクセと呼んでいます。そのクセに振り回されていると成長の妨げになるので、早期にクセを把握し改善することを目指します。

ここまでが本人が有する4要素です。4要素を使いこなした職場でのコミュニケーション例を書いてみます。
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上司  「今日の気分はどうだい?」
Aさん「あまり良くない<気分>ですね、眠気と倦怠感<サイン>が出ています。」
上司  「それは良くないね」
Aさん「はい、昨夜遅くまで眠れなかったことと、睡眠の質が低かった<三大生活基盤>と感じています」
上司  「何かあったのかな?」
Aさん「実は昨夜友人とLINEをしていた際に、友人が何気なく発した言葉に引っかかりを感じて、モヤモヤ<癖1>してしまいました。1時間くらいして自分でクセが出ていることに気づき、またやってしまったと自己嫌悪に陥った<癖2>ため、寝つきが悪くなったようです」
上司  「そうか、久しぶりにやってしまったね(笑)」
Aさん「はい、スミマセン」
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如何でしょうか。
このような出来事はないほうが良いと考えがちですが、それでは見せないように誤魔化すようになるだけです。セルフケが目指すマネジメントは、我慢して見せないことではなく素直に言語化して報告してもらえることで、上司も状況が良く「わかる」ことです。


次に使いこなしたいスキル3要素について説明します。

「可・不可」
今の状態で出来ることと難しいことを仕分けます。この際に気を付けたいのはメンタルの疾患があるとゼロヒャク思考になることです。今の状態を点数化してもらうと100点か0点になるため、できるときは何でもできて、できないときは何もできないという極端な思考になりやすいです。皆さんは100点や0点の日ってありますか?僕はないです。25点、50点、75点の日があるというイメージではないでしょうか。まずは、ゼロヒャク思考から25・50・75思考に変えていきます。すると、25の日にはできることとできないことがあると考えられます。同様に50も75も何でもできるわけではないし、何もできないわけではないと気づけます。これを整理するのです。

「回復対処」
メンタルの疾患があると通常の方より1.5~2倍疲れやすいというのが僕の持論です。すぐにバッテリーが切れそうになるわけです。バッテリー残量が少なくなるとエコモードになります。スマホのエコモードは画面を暗くし、通信を止めたりしますね。これと同様のことが人間にも起こります。良い部分が出なくなり、良くない特徴が目立つようになります。この対処は簡単です、回復対処(参照:リカバリー)をするのです。短時間で回復対処ができるスキルがあれば、能力を発揮できる時間が増えるわけです。多くの企業の障がい者の方はエコモードで働いているという怖い事実。バッテリー充電を考えることをお勧めします。

「報告相談」
必要なことを報告し、適切な配慮の相談をします。配慮相談の第一目的は、持てる能力を発揮するためです。上司もご当事者も配慮は無いほうが良いと考えている方が多いですが、これは明確に違います。可能な範囲であれば環境整備をしたほうが本人の能力は発揮され、生産量が拡大します。

さて、先ほどの上司とAさんの会話の続きを見てみましょう。
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上司  「今日の仕事はできそうかな」
Aさん「そうですね、午前中はいつも通りの仕事ができそうですが、午後になると眠気が出るかもしれません。そうすると集中力が低下しますので、細かいチェックのお仕事ではミスをしてしまう<可・不可>と思います。もしその状態になったら報告をしますので、少し回復対処の時間<配慮相談>を頂けると嬉しいです」
上司  「回復対処は何をするかな?」
Aさん「1階まで歩いて降りて、外で深呼吸をして、水分補給をしてみます<回復対処>。それでも眠気が残っている時は先週やった資料のPDF化の作業<配慮相談>をさせて頂けると助かります」
上司  「わかりました。では一応準備しておくね。では、本日もよろしくお願いします」
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これがセルフケアをマスターした方と職場の姿です。一緒に働く上司や同僚も働きやすく、Aさんも周囲に理解され配慮やサポートを受けやすいため、ストレスが減り、就業しやすくなります。

・・・今回の講義は以上です。次回は 職業準備とセルフケアトレーニング です。


【ディスカッション】
1)KSTEPを導入する特例子会社の実態を聞く
KSTEPを数百名の方に導入している現場の話を聞きたいというご意見が多かったので、新しいメンバーの話を皆さんで聞きました。
導入当初はシートの運用(セルフチェックしたシートを使って報告を聞く)に対して、一部の支援者から反発があったり、リカバリータイムを設けることに「学校じゃないんだぞ」という声もあったようですが、今ではリカバリータイムを取りやすい空間や、一人で集中して作業ができるブースが設置されたりと、就業者が能力を発揮しやすい環境が少しずつ進んでいるとのことでした。
印象的だったのは、経営TOPがこのKSTEPの取り組みを経営課題の最重要項目に設定し、バックアップをしてくれているとのこと。「こういった取り組みの重要性をわかる人がいるんです」というコメントを嬉しく思いました。

2)「ありのままでいい」の限界と可能性
テーマは福祉特有の「ありのままで良い」という考え方について。これ多くの企業ではなかなか通用しない価値観なのですが、とても奥が深い価値観だということで2グループに分かれて話し合ってみました。
ありのままは存在するだけで素晴らしいという考え方。この価値観は母性的で安心が生まれそうです。一方、成長・変化することが重要であるという価値観は父性的で、厳しさも含まれそうです。
これを二元論で捉えるより、どのように使い分けるかが重要なのだと感じる意見がたくさん出ました。おひとりの方からは、ありのままを認める環境は、より成長したい変化したいという勇気を与えるというマネジメント理論の紹介もあり「なるほど」と皆さんうなずいていました。
僕は、“何のありのままか”を考えることが大切だと思っていて、表面性ではなく、本質を大切にしたいと思っています。これ、長くなるので、次回のブログに書いてみます。


【参加しての感想】
あっという間の2時間。皆さんからは以下のような感想が出ました。
・参加者のキャリアの話が面白かった
・多彩なメンバーで有効な情報共有や議論ができる場が楽しい
・違う仕事やライバル企業でも、目指す世界観が同じで、協力して歩めることが嬉しい
・一人でモヤモヤしていたことも、ここで出してみると多くの知見や情報を得られた
・自分と違う側(支援者であれば企業)の考え方を聞くことは非常に参考になると感じた、こういう機会を続けたい
・違う世界の方と話をすることで新しい価値観や取り組みが生まれそう
・診断を受けたばかりの方が障がいを受容するという課題に関して支援の仕方について話をしたい

今回のレポートは以上です。


第3回4bunnno3サロン 2020年8月22日15時スタート
ご参加ご希望の方はこちらをご覧いただき、手順に従ってエントリーしてください

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