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オンライン企業実習

2020.10.20

report

7月27日に書いた「就業前のリモート型企業実習の実力」の続報です。

コロナ環境になって障がい者就労移行支援の世界ではいろいろなことが停滞しました。不安が強く通所ができなくなった方もいたでしょうし、就職のお話が白紙になってしまった方もいたと思います。そんな中の一つに、就活前の施設外実習の機会が失われたというものがあります。

僕は施設外実習を重視しており、就職前提ではなく社会のステージをお借りすることで、作り物ではない仕事や関係を通じて働く本質に気付き、自信を付けることができると考えています。ですから、実習の機会が失われたことを強く残念に思っていました。

そんな中、マイナビの特例子会社のマイナビパートナーズさん(以下MPT)から、オンラインでの企業実習を作りたいから協力して欲しいとお声を掛けて頂きました。MPTでは以前から多くの企業実習の場を提供していたそうですが、コロナ禍でこれが難しい状況があり、現状を打破したいと考えたそうです。

6月にご相談を受け、同様の企画を先行していた堀江車輌さんのオンライン企業実習を見学させて頂き、それから企画を固めていきました。

週3日の2週間で計6日間、マイナビグループ各社から集めた3つの業務に取り組んでもらい、コミュニケーションではGoogle MEETというWEB会議システムとChatworkというチャットシステムを平行利用して環境をつくりました。ご参加者は6名で3名ずつの2グループにし、参加者同士で相互支援するスタイルにしました。

僕がこだわったのは、セルフケアのスキルレベルを確認する仕組みを構築することです。僕が支援者をしていた頃、僕の教え子は3か月の企業実習に出していました。数週間程度の実習では、彼らは自分のペースを崩してでもやり切れてしまいます。長く社会で活躍するためのペースや、環境整備、配慮などを考えなくても良いのです。彼ら自身がそのことに気づくためには、3か月の実習期間が必要でした。
これをたったの6日で実現する!?

そこで、初日にはセルフケアのセミナーを1時間盛り込み、6日間の工程の3日目と4日目にはセルフケアを試す指令を出すことにしました。1つは業務の中でわからないことが出たと仮定して、もう一つは体調が急に悪化したと仮定して、それぞれの場面で何を考え、どう行動するかをチェックしました。一言で言えば避難訓練のようなものです。

2か月の準備期間を経て、10月5日から2週間の研修を実施しました。MPTと仲の良い
Litalicoの3つの事業所から実習生が6名、そして運営側はMPTの社長が上司役として、僕が指揮命令者として参加しました。

1日を3コマに分け、毎回最初に指示を出し、コマの終わり20分前には業務内容の相互チェック(3人で内容に間違いがないかを確認)をし、10分前からは僕に業務の中での学びや気づきを報告してもらいました。

最初は「わからない、どうしたらいいの」と混乱する方も出ましたが、僕は求められたことには応じても、こちらから手を貸すことは極力しません。モニター越しに(彼らからは僕の姿は見えていませんが)彼らを観察し成長を見守りました。初日になんとなく流れや環境に慣れ、2日目には課題に気付き自然と生まれたリーダーを中心に仲間で協力して修正を始めました。各コマの学びや気づきの報告も徐々に精度が上がり、仲間の成長もお互いに刺激にもなっていたようです。

セルフケアの指令では、何も問題がなかったメンバーほど迷い、悩む場面も見られました。皆それぞれがたった数日で自分の課題に気付き、どのようにクリアすれば良いか考え、実行していました。

実習で発揮できる強みを21項目与え、自分や仲間の強みは何かを考えてもらいました。最終日にはご支援者も参加している中、各自がパワーポイント資料に「参加前の課題」「参加しての学び・気づき」「印象に残ったエピソード」「これからの自分」をまとめたものをプレゼンテーションしてもらいました。そして最後には卒業式で、各自それぞれの強みや課題を書いた終了証明書を読み上げてお渡ししました。

プレゼンや卒業式では何度も涙が出ました。自分の成長を実感し、自信を付けた顔は本当に誇らしげで晴らしいですね。リアルには一度も会っていない彼らですが、なんとも愛おしく、久しぶりに新たな教え子が生まれた気分です。

後日アンケートでは、満足度は5段階評価で全員から満点を頂きました♪
最終日のプレゼンや卒業式にご参加頂いたご支援者からは
・みなさんそれぞれ成長し、さまざまな気づきが得られ必ず今後の就職活動や
 就労に活かせる貴重な機会になったと思います
・プレゼンを聞いていてすごく感動しました
・日々の報告を受ける中で、障害特性の理解やご自身の課題と向き合う姿勢が
 深まっていくのを支援者側も感じておりました
・通所時の表情も良く、少しずつ実習を通して自信がついてきているのが
 客観的にもわかりました
・(最終日は)愛のある振り返りで、話を聞いていて涙が出てしまいました
・実習が始まる前と終わった時の表情が全く違っておりこの短期間の中で得る
 気づきは非常に多かったと思います

などのご評価を頂きました。
我ながらとても良い仕組みができました。MPTさんにはこのチャンスを頂けたことに感謝です。

リモートでも、いえもしかするとリモートだからこそ素晴らしい実習ができるかも知れないと思えました。リモートでの実習や学びの場をお考えの方がいらっしゃいましたらお気軽にお声がけください、お手伝いしますよ。

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