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第8回 4bunnno3サロン

2020.12.23

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、年内最後の第8弾を実施しました。今回は新規ご参加の方お二人を迎えて、僕を入れて9名で実施しました。

まず恒例のセルフケアセミナーですが、前々回までで一段落したので、もう一つのメソッドであるキラパタについて、これから数回連続で講義します。キラパタの正式名称は「多様な人たちが輝くためのパターン・ランゲージ」です。川崎市のHPからすべてダウンロードすることが可能です。

【精神障がい者が活躍できる職場のつくり方 キラパタ①】
現在における障がい者雇用の中心は精神障がい者雇用と如何に向き合うかというステージに入っています。しかし多くの企業にとって精神障がい者雇用はハードルが高いのです。別な言葉では「不安が強い」のですね。その理由はここに挙げた3つの理由にあると考えています。

今回はその中の「精神障がいという疾患に漠然と怯む」ことに対する理由と、それらを払拭するための情報を提供します。

①社内のメンタルダウンの方は状態が不安定!
  100名上の企業には100%に近い率でメンタルダウンになった社員がいます。
  その方は休職を繰り返しており、メンタルの方は不安定であるという認識が
      なされている。わざわざ同じ状態の人を外部から採用することの意味が
  わからない、というものです。
②そもそも精神障がいが良くわからない!
  いろいろな研修に出かけて勉強すると、病名や薬の話を聞かされます。
  そんな専門的なことを知らなければ一緒に働けないのは、とても大変だと
  思わせています。
③就業現場からの反対が強い!
  経営者や人事はそれでもハローワークなどからの要請もあり、重い腰を上げ
  ますが、現場は数字をあげることとの両立を押し付けられたと感じ、
  「現場のことを理解していない」と対立構造が生まれます。

精神障がい者雇用を始める前に、これらのことをクリアしていくことが大切なのです。

気付き①、②、③は以前セルフケアのセミナーでも話していますので、ここでは割愛しますね。


④はキラパタのNo2「まずは出してみる」です。
障がい者雇用を進める企業のTOPや人事は、強い決意をもって始めようとします。「これは法の順守でもある」という正義もあります。しかし、この言葉を出した瞬間現場のホンネは出にくくなります。ややもすると「正義に背く賊である」という位置にされてしまうんですね。そう感じた現場では、嫌な言い方をすると足を引っ張る心理になります。うまくいかなかったときに「ほらね」と言いたくなるのです。これは組織として良い状態ではありません。また、障がい者雇用において重要なのは現場の前向きな受け入れ姿勢や、障がい者との気軽なコミュニケーションの関係を構築することですが、これを期待できなくなります。
そこでNo.2「まずは出してみる」の登場です。雇用を始める前に受け入れ現場のメンバーの不安を聞く場を作ります。最初は「そうは言っても不安でしょ?」と呼び水を掛けると良いですね。堰を切ったように本音が出てきます。ここでガス抜きをしっかりします。しっかり受け止めながら、先に示した①②③の情報を提供しましょう。自分たちの不安が過剰であったり、根拠がないものであることに少しずつ気付き始めます。そうすると「実は、私の親戚にメンタルの方がいて・・・」など、精神障がい者の方が活躍できる世の中になると嬉しいという意見も出始めます。
ここで目指すのは、前向きではなくて大丈夫です。後ろ向きではないことくらいがちょうど良いでしょう。「とりあえず一度やってみましょうか」というところまで持っていければ、この会議は成功です。障がい者雇用を始める前のこのひと手間が後々効いてきますよ。
今日のセミナーは以上です。

【ディスカッション】
皆さんから4つ話したいテーマを出し、次の2つについてグループディスカッションをしました。
今回は「参加メンバーのキャリアアップ」と「雇用における現場と外部との連携のあり方」というものでした。

1.参加メンバーのキャリアアップ
今までは現在抱える問題についてお話することが多かったのですが、新しい切り口のテーマが出てきました。この場にご参加の皆さん自身が今までのキャリアを経て、今後どのようなことに携わっていきたいのか情報交換をすることにしました。
この世界に入ろうと思った理由は、仕事選びの段階から決めていた方もいれば、就業した先で障がい者雇用に出会った方もいました。ただ現在の障がい者雇用のあり方に疑問を持ったり、改善の必要性に気づいたことから遣り甲斐を感じている方が多いようです。その中でご自身の知識や専門性の向上、領域の拡大をしながらより問題解決ができる力を高めたいと考えているようでした。一方で給与や待遇が高くないという現実もあり、悩んでいる方もいました。
お話しをお伺いしていて、皆さん自分の価値を高めて、より活躍できる立ち位置に自分をプロデュースしたいと思っていらっしゃるように感じました。これはメンバーシップ型からジョブ型雇用に切り替わりはじめた現代に生きるすべての方が考えているテーマですね。少しそのことを実現でき始めている僕から皆さんにそのために必要なこととして次の3つを提示しました。
 ① 自分自身を高め、鍛えること
 ② 自分の強みやできることを明確化すること
 ③ そのスキルの売り方、提供の仕方を構築すること
今までにないテーマでしたが、大変興味深く、お互いに参考になることの多いテーマでしたので、また取り扱ってみたいですね。

2.雇用における現場と外部との連携のあり方
これは、社内と社外という連携だけでなく、社内でも障がい者が就業する現場とそれ以外(例えば経営層や採用部門など)との連携もテーマになるようです。

社外連携においては、A就労支援機関、B雇用企業、C定着支援機関などが代表的な登場人物でしょう(医療機関やご家族なども入る場合もあるかも知れません)。連携における基本プランは①役割分担、②情報共有の2つで良いかと思います。
①役割分担は、A就労支援機関は雇用前の職業準備を担い、B雇用企業は業務に関することはマネジメントし、雇用後の生活に関わることはC定着支援者が支援するというのが基本的な認識のようです。
②情報共有(1)受け渡し時(2)通常雇用時(3)トラブル時の3つのプランが欲しいところですね。(1)では受け渡し先が必要と認識する情報項目を事前に協議して渡すこと、(2)は定期的に負担の少ない方式で情報交換し、(3)では臨時会議を設け問題のポイントを見極めそれぞれの対応役割を確定しアクションすることです。
(3)が頻繁だと負担が大きいため(1)と(2)を機能させることでトラブルを減らすことが期待されます。(1)では「就労パスポート」など何を伝えると良いかのノウハウは凡そ出来上がってきていると思われます。A就労支援機関、B雇用企業、C定着支援機関が同じ方向を向いて機能することが重要だとわかるお話しあいでした。

もう一つ、社内連携においても意見が出ていました。これも基本は社外と同じモデルで説明はできるはずですが、社内という同一組織にあるからこその心理的なストレス負担が大きいのかも知れません。「なぜわかってくれない」というものですね。近い存在ほど敵視しがちというのは組織に良くあることです。
 1)お互いが同じゴールを目指す仲間であることの再確認
 2)定期的な問題や困りの共有機会の設置
必要なのは以上の2つですが、その際に重要なのは対話をするということです。大抵うまくいかない理由は「話を聞いていない」「言い方に腹が立つ」など、コミュニケーションの技術の問題のようです(僕も身に覚えがあります・・・)。当事者同士ではどうしても対立構造になってしまうような場合は外部のファシリテーターなどを使うと、それだけで冷静にお話が展開できることも多いようです。
ご参加者から『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』という本のご紹介もありました。

今回のレポートは以上です。


2021年の4bunnno3サロンの日程は以下の通りです。前回のお報せと日程がずれていますので、ご注意下さい。また先日ご参加者に実施したアンケートを受けて一度時間を午前10時からに変更してみます。

第9回4bunnno3サロン 2021年1月16日
第10回4bunnno3サロン 2021年2月6日
第11回4bunnno3サロン 2021年2月27日
第12回4bunnno3サロン 2021年3月27日


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新しいメンバーのご参加お待ちしています。

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