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第9回 4bunnno3サロン

2021.01.20

report

就労・定着支援に関わる方が相互に気づきを高め、学びを深める4bunnno3サロン、本年最初の第9弾を実施しました。
年末にアンケートを取ったところ午前中の開催をご希望される声がチラホラあったので、初めて午前に僕を入れて5名で実施しました。残念ながらなぜか録画が撮れていなかったので今回は雰囲気の写真を掲示できずスミマセン (;・∀・)

冒頭は全員で近況報告をしたあと、前回に引き続きキラパタ(多様な人たちが輝くためのパターン・ランゲージ:川崎市のHPからすべてダウンロードすることが可能)の解説から始めました。

【精神障がい者が活躍できる職場のつくり方 キラパタ②】
前回までの講義で、精神障がい者雇用になれていない企業も精神障がいという病気への理解が進み「そこまで怖がらなくていいな」と思えるようになっています。そこで次に必要なのが「精神障がい者が現場で活躍できるための関わり方」ですね。今回はココをお話しします。

そのためには実際に精神障がい者を雇用してうまくいっている現場とうまくいっていない現場から導かれるポイントが分かると良いですね。僕が過去多くの企業さんのコンサルに入り込み、独自の視点で企業のホンネとしてまとめたのが次の3つです。

ホンネ1)何を任せて、どのように育てたらいいのかわからない
  企業のコンサルに入るともっとも多い質問が、「どんな業務を準備すればよいか」
  と「マネジメントの仕方を教えてほしい」の2つです。この2点は雇用を始める前
  にイメージを付けておくと良さそうです。

ホンネ2)コミュニケーションが取れず、必要な配慮がわからない
   次に僕が重要だと感じているのは、お互いの意思疎通がうまくいかないと感じ
   ることへの対処です。就業する障がい者本人しか心身の状態は分かりません。
   良くあるのが、本人の調子が悪そうに見えた上司が「大丈夫かい、休憩をとっ
   ていいよ」と声を掛けるも、本人が「大丈夫です」と言ってそのまま業務を続
   けて、翌日から出社できないなどの状況です。この際に上司は(だから言った
   のに・・・コミュニケーションが取れないな~)と感じるというものです。
   同様に仕事の指示をした際に「どうかな、大丈夫そう?」と聞いたところ本人
   は「大丈夫です」というものの、業務終了時に見ると何もできていない。これ
   も上司は(できないなら、できないと言って欲しい・・・ コミュニケーション
   が取れないな~)と感じてしまいます。

ホンネ3)トラブルが発生し、業務以外に取られる時間が多くなる
   障がい者雇用ではトラブルが起こる場合があります。そして外部の支援者など
   も参加して少し大げさな対応になりがちです。これが一度なら良いのですが、
   何度も続くと、業務が進まず(戦力として雇ったのに、逆に手間ばかり増えて
   いる・・・もう面倒くさいな~)と感じてしまいます。

これら3つのことに対して気づきやメソッドを提供します。

ホンネ1に対して、気づき⑤「能力的にできない業務はない」(キラパタNo9 なるほど!探し) を提供します。
精神障がいのIQは業務をするためにまったく支障なく、肉体的な制限もありません。ですので能力としてできないことはないのです。「日本人に向く仕事は何ですか?」「女性に向く仕事は何ですか?」と尋ねるのと同様にナンセンスであると認識して頂くと良いでしょう。
但し、業務そのものではなく、業務に伴う何かが、苦手だと感じさせることがあります。彼らが不安や疲れを招きやすい業務や環境をシートの下段にまとめましたのでご参考ください。

その中から「外線電話対応の業務」を例にして解説を試みます。
恐らく精神障がい者の多くはこの業務が苦手と感じます。そして多くの支援者もこの業務をさせないで欲しいと言います。僕は、これはもったいないと感じます。なぜなら多くの企業がこの業務に対応してくれることを望んでおり、実際にできるようになることも多いからです。彼らは電話が苦手なのでしょうか?いえいえ、毎日のように友人と電話で話してますから(笑)
つまり、電話が苦手なのではなく、企業での外線電話対応の何かが彼らに苦手意識を持たせるのです。


気付き⑥関わり方で出来ることが増える(キラパタNo11 できるが増える)を使って僕が実際にやってみた実例をご紹介します。
彼らに外線電話に対する不安理由を尋ねると、以下の3点が多く挙げられました。
・業務用の電話機の使い方がわからない
・企業用の電話の出方、最初の挨拶の仕方がわからない
・相手の顔が見えず、いきなりクレームを言われるのではないかと不安

前回ご紹介した通り、彼らの不安は健常の方とは比べ物にならないほど大きいので、最初から外線電話の業務を与えるのは避けても良いでしょう。最初に任せた業務で安定したパフォーマンスが出た頃に例えば以下のようにお話します。

上司「お仕事順調ですね、とても助かっています」
本人「そう言って頂けると嬉しいです」
上司「そろそろ新しいお仕事を追加してお願いしたいと考えていますが、如何ですか」
本人「そうですか、少し心配ですができることがあれば」
 ※ここで本人の前向きな気持ちを引き出すことが大切です!
上司「電話にでてもらうという業務なのですが、不安がありますか」
 ※基本不安があるはずなので、本人がYESと言いやすい聞き方がお勧めです!
本人「あ、電話ですか。そうですね不安があります」
上司「そうですよね、でもいきなりではなくて良いですし、支援や必要な工夫もしま
   すのでチャレンジしてみたいという気持ちがあれば応援しますよ」
 ※本人の努力だけを求めるのではなく、「周囲のサポート」や「環境の工夫」を
  提供する準備があることを伝えます。本人は少し気持ちが軽くなります。
本人「そうなんですね、ではやってみますのでサポートをお願いします」

始める気持ちになるまでの関わり方はこのような感じです。そして実際の周囲のサポートや環境の工夫の仕方の一例は次のようなものが考えられます。

・業務用の電話機の使い方がわからない
 ↳時間をとって説明します
・企業用の電話の出方、最初の挨拶の仕方がわからない
 ↳「はいお電話ありがとうございます、○○商事です」などの自社独自の最初の出方
  をプリントして目立つ場所に貼っておきます。さらに本人が慣れるまでロープレ
  対応をすると良いでしょう。
・相手の顔が見えず、いきなりクレームを言われるのではないかと不安
 ↳慣れるまでは内線電話から対応してもらうようにします。外線対応をする場合も
  一次対応の取次までとしておくと良いでしょう。もし相手がいきなり内容を話し
  始める場合は、「申し訳ございません、対応できるものに変わりますので少々お
  待ちください」と言ってエスカレーションするというようなルールを作っておく
  と良いでしょう。

以上です。このように関わり方で出来ることを増やす際のとっておきのメソッドが次の3つを常に組み合わせて考えるというものです。
 1)本人の努力:本人に努力して欲しいこと
 2)周囲のサポート:周囲が本人のために取り組めること
 3)環境の工夫:今までは無かったルールやツール
これが上手に使いこなせると、障がい者だけでなく新卒入社者などを戦力化することも上手な雇用現場になるでしょう。


気付き⑦苦手なことに固執しない(キラパタNo12 できないことを見極める)は今までの情報とワンセットで押さえておきます。
「できるが増える」は常に上手くいくわけではありません。努力や工夫をしても改善が難しい場合は、いっそ担当業務を変えることもひとつの選択肢として考えます。
こだわり過ぎると生産性が上がらないだけでなく、職場全体のストレスが増えることにもなります。難しいことにチャレンジし続けるより、本人の強みを活かすほうが戦力になります。難しいことは「今は難しかったね」と見切ることも大切で、本人の適正を重視して、より力を発揮できる業務を再アサインすることも選択肢にしておくと良いでしょう。

もう少し話したことがありますが、長くなりましたのでここでは以上にします。


ここからは全員で議題を提案し合い、皆でディスカッションをします。今回は人数も少なかったので全員で話をしました。

【メンバーの成長意欲の導き方】
雇用企業だけでなく支援者も、メンバーや利用者の成長意欲を導くことに色々と知恵を絞り、取り組んでいるようです。その情報を共有することにしました。

①分かりやすいビジョンや理念を掲げて、TOPは自分の言葉で語る。
普段からそのことに関してメンバーに意見を求めたり、上司は自分の考え方を話す機会をつくる。
 パーソルサンクスの例:掲げているビジョンは「ありがとうをかたちに」。
  何か新しい取り組みをする際には「それはありがとうが形になっているかな?」
  などと声を掛けて考えてもらっている。

②日々の小さな成長や良かったことを大切にして共有する。
大きな話だけでは日々は過ごせないこともあるため、一日少しの成長に気づくことが大切その際の話し方はGOOD&MOREがお勧め。BADの話はせずに、MORE(もっとこうすれば成長できそうだ)で話す文化は前向きな気持ちを育てやすい。

③ゲーム要素を入れる。
ゲームにはまる理由は、ゲームは人を引き付ける仕組みがとても上手だから。成長を実感しやすく、わかりやすい仕組みがあると良い。
 例:いつもやっている作業の時間を計り、週一回でその記録更新を目指すなど

④良い仕事をした人たちへの表彰の仕組みをつくる。
数字だけではなく、ちょっとしたアイデアや工夫をしている人、成長している人を対象にする。表彰だけでなく、良い事例を上司は全体に発信する機会も作る。心が昂る環境は人を育む。
因みに金一封より、家族に「あなたの大切な家族が当社で大きな活躍をしてくれましたので感謝のしるしを送ります」と高級肉やカニなど本人と選んだ商品を本人ではなく家族に送るほうが効果は高いと感じます。金一封はその場で終わりだが、家族が「父ちゃん、母ちゃんスゲー!!」、「うちの娘、息子がんばってるな!!」という気持ちは長く効果を発揮します。

⑤自分のありたい姿を実現するための、具体的なアクションを言葉にする。
目標は立てても具体的にそのために今日から何をするのか決めていないと、動き始めません。
 例:目標:仲間ともっとコミュニケーションする
    実行プラン:毎朝自分から挨拶をする
という感じですね。もし挨拶をしていなかったら「今日はあいさつできた?」と聞くことで本人の意識の後押しができます。

このテーマは以上です。

【支援者として嫌な特例子会社】
今回は支援者が少なかったことと、残り時間が10分であったため少しだけ情報交換しただけにとどまりました。

①特例に関わらず、社員に対する愛情を感じない。
②外部支援者に依存し、自分が雇用している自社の社員であることを意識できない。
③トップが本社からの出向で、心がここにない。
④稼ぐことをあきらめている会社、社員を戦力化する努力ができない。

このテーマはもっと支援者が多いときにもう一度話そうということになりました。
今回のレポートは以上です。

今後の4bunnno3サロンの日程は以下の通りです。開催時間は午前10時からです。

第10回4bunnno3サロン 2021年2月6日
第11回4bunnno3サロン 2021年2月27日
第12回4bunnno3サロン 2021年3月27日


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既存・新規いずれもご参加連絡お待ちしております。

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