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K-STEP研修会 in 横浜 で頂いたご質問に回答します! ③

2020.03.19

know-how

過去二回に引き続き、2月に横浜で実施したK-STEP研修の事後アンケートで頂いたご質問に回答します。
Q10では、研修初日に一緒にご登壇頂いた湘南ゼミナールオーシャンの前山様に一部ご回答頂いています。

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■Q8 人によってはシート、サインへの記入が「就業中」と「就業外(家庭)」が混在し、セルフケアの自己評価や対処方法が職場外の場合のアドバイスに迷うことがあるけれど。

▶A8 具体的に何か問題があるのでしょうね、このご質問だけではその深い意図を正確に理解できませんでした。ご質問の意図と違うかも知れませんが、少し書いてみます。
僕は就業中(就労移行利用中)をオンタイム、それ以外をオフタイムと呼んでいます。トレーニング中の方のどちらが重要かと言われれば間違いなくオフタイムと回答します。メンタルの障がいは、そうでない方(健常者)の1.5倍から2倍疲れやすいと考えています。オンタイムは平気に見えていても実はエネルギー切れを起こしていて、自宅ではまったく生活ができていない(例えば部屋に入った途端、崩れるように寝てしまう)方もいます。
日本の社会通念では、「オフタイムは自己責任、100点で次の日出社するのが当たり前」という感覚が当たり前とされています。ですから、もしかするとご質問にもあったように、在宅中のことは言いにくいとなるのかと推察します。しかし、オフタイムが崩れていてはオンタイムに能力を発揮することは難しいのです(障がいの有無に関係なく)。順調な方も崩れるのは決まってオフタイムからです。ですからまずはオンタイムだけでなくオフタイムが重要と相互共有できると良いと思います。

また、無理にアドバイスする必要はありません。「オンタイムに能力を発揮できるといいよね」という共有見解を設け、そのためのオフタイムの課題が何であるかを考えてもらい、その報告を受けるだけでもメタ認知(※Q5参照)が進み効果があるでしょう。すべてにおいてそうですが、支援者が「相手を変えよう」と思いすぎないことですね。「相手が自分で変わりたいと思えるように支援する、寄り添う」のがベターですね。

■Q9 長く続けることが大事であるとのことですが、私たち企業の短い所内研修(5日間程度のオフィス内実務研修)でも使用して効果があると思いますか。

▶A9 実は何度か同じような環境でセルフケアトレーニングをして欲しいと言われ、取り組んだことがあります。結論から言うと、1,2週間のセルフケアトレーニングで手に入るスキルは非常に少ないでしょう。最低でも3~6か月は欲しいところです。
但し、知識情報としては有効なことも多いですね。やらないよりやったほうが良いと思いますが、知っていることとできることは別だとお捉え頂ければと思います。

■Q10 企業側の意見として、
①「コスト」という視点があるが、もう少し詳しく聞きたい。
②また、どんな人が欲しいと思うか、求められているか、率直な意見が聞きたい。

▶A10-① 【株式会社湘南ゼミナールオーシャンから回答】
企業側の「コスト」という視点について、当社での考えをお伝えいたします。
一般的に雇用すると給与額の1.5倍から3倍近くコストが発生すると言われております。雇用に伴うコストとしてどこまで見るかは企業によって異なるため、幅が出ることをご理解ください。
端的に申し上げると、雇用に伴うコストを吸収できるコストの1.5倍から3倍程度を売り上げることができれば社会全体の精神・発達障がい者の雇用は進みます。逆に、短期間での離職や欠勤が多すぎると、雇用に伴うコストだけかかり、いつまでたっても雇用を維持できる売上を出せるようにはなりません。また、「コミュニケーション」や「支援」というコストも発生します。雇用コストを投資として考え、回収できるまでの時間はある程度まで想定している企業も多くあるのですが、回収できなかったり、回収までに時間がかかりすぎてしまうと、障がい者雇用の選択をとりづらいのではないでしょうか。
当社では、採用コストを下げる取り組みと共に、K-STEPを使ったセルフケアで定着率と勤怠の安定を図り、「支援しない支援=主体的に働く」ことを目指して、雇用コスト以上の売上を上げられるよう取り組んでおります。
※初期費用にあたる採用コストとその後のランニングコストとしての雇用コストがあります。採用コストだけでも、求人広告費・紹介料・採用代行費、会社案内等の製作費、採用担当の人件費などかかります。また、雇用に伴って発生するコストとしては給料や賞与だけでなく、社会保険料、福利厚生費、研修費、PCやソフトウェアなどの設備費等がかかります。これらのコストに加えて、間接部門の按分されたコストも含めた売上が必要になります。

▶A10-② 【株式会社湘南ゼミナールオーシャンから回答】
当社の考えをお伝えします。
当社では、いわゆる直接的な業務遂行能力である「ワークスキル」「コミュニケーションスキル」が高くても、障がい受容を含めた自己理解や採用後の研修によって伸びるかどうかの素直さがない方は採用しません。逆に言うと自己理解や素直さがあれば、「ワークスキル」「コミュニケーションスキル」は入社後に育成できると考えています。また、理念や価値観、企業文化にご賛同いただけるどうかも大きなポイントとしています。そのため、実習をお勧めして、当社の理念、価値観、企業文化をご理解いただく機会を用意しています。
精神・発達障がい者の雇用に関して成功体験を持っている企業が少ないため、まだ業務遂行能力のみでの採用が多いとは思いますが、経験を積みK-STEPを使ったセルフケアをしっかり身に着けた方は、主体的に働ける方が多く、その後の雇用管理コストを考えても、採用においてかなり優位になります。

■Q11 運用していく中で、なかなか自分用にカスタマイズが出来なかったり、気付きが得られなかった方のケース、また、そうした場合のアプローチの方法があれば教えていただきたい。

▶うまく進まない場合最初にQ2に書いた「成果の出る方程式」をご参考下さい。

それ以外では発達障がい傾向の方は、セルフケチェックが苦手で気づきが少ない可能性があります。その場合有効なのは、周囲の気づきをフィードバック(FB)してあげることです。気づくというと、自分だけで気づかなければならないと考えがちですが、そんなことないですよね。「自分はこんな人」と皆さんが思っていることの大半は、以前誰かに言われたことが影響しているはずです。気づきを増すアプローチ方法は、支援者のFBもそうですが、同様にご利用者同士で気づきをFBし合える時間があるとかなり有効です。

僕がやっていた就労移行では毎週金曜日、ご利用者が4名でグループを作り、この一週間を振り返りシートに従って15分ほど記入し、その後一人20分でどんな一週間だったかを他の3名に話します。残りの3人からはその方を見ていてこの一週間で良かったことや、もっとこうすると良いかも知れないという情報提供を行うというプログラムを運用していました。その際、スタッフは見守りだけにとどめて、基本利用者だけで話をします。最初に対話の感覚(否定をしない、他の人の話を聞く、一言でも自分も発言するなど)を教えておくだけでトラブルもありませんでした。似たような症状のある仲間たちが何を悩み、考え、どう変化し、何を行動しているのかなど、スタッフでは伝えきれない情報が交換されるその場は、多くの利用者にとって最大の学びの場だったようです。また、最初は他人にまで目がいかなかった方たちが、他人との関わりに関心を持ち、親切にコメントする成長した姿は客観的にも素晴らしく、社会に出ても大丈夫と感じさせてくれました。ご参考になれば良いのですが。

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