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リカバリータイム全社導入という取り組み

2021.07.06

report

嬉しいことに僕には研修の要請が年間通じて結構な量届きます。その時に嫌味な感じになってしまいますが、僕がお伝えするのは「研修だけしても成果はほとんどありませんが、良いでしょうか」です(汗)
研修でご満足頂くのは然程難しくないところまでは到達しました。あまり他所では聞けない情報を扱い、伝え方を工夫しているので、研修満足度には自信があります。

しかし、理解しても実際にそれを自分の組織でやることには、まだいくつもハードルがあります。知っていることと、できることには大きな差があるからですね。やってみようと思うと「あれ、こういう時はどうするんだ?」と壁にぶつかる訳です。知識を身に付ける研修ではなく、最低でも実践的なワークを繰り返すこと、理想としては現場でのOJTの機会を作ることで初めてデキル力が付きます。

ところで、僕にとってまだ経験値の少ないことに「大規模組織での一斉実施」というテーマがあります。僕のメソッドは今までスモールな組織(小さな企業や、大きな組織の一部)で繰り返し実施し、成果をあげています。つまり正しい取り組みであり、実施すれば有効であると言えます。しかし残念ながら大きな規模での実績がほとんどありません。大きな規模の組織も、障がい者雇用という切り口では、10名程度までの小さなチームが組み合わさってできていますから、このメソッドは十分通用するはずです。

そんな中一つのチャンスがやってきました。
現在お手伝いしている企業では、僕のメソッドの根底にある障がい者自身のセルフケアというキーワードに着目して下さり、社長が中心となって全国の若い優秀なマネージャーを集めてプロジェクト(PJ)を結成しました。各PJメンバーは個別に議論しながら取り組んでいます。その報告と次回までの方向性を決定する会議体(月1回)には僕も参加させて頂いています。

この企業では、障がいのある社員が全国の複数の組織で活躍しており、受け入れ態勢も客観的に見て素晴らしいと感じます。それでも突発休(急なお休み)が見受けられ、就業に対するモチベーションが低い方も含まれているそうです。採用段階で自身の障がい受容についてチェックしているものの、セルフケアができていない方も一定いると感じていました。そこで、彼ら自身が就業の中で我慢したり溜め込むのではなく、自分のその時々の症状(疲れが溜まっている、集中力が低下しているなど)に気付き、早めに自発的に対処行動(短時間リフレッシュ、業務を変える、報告相談など)ができるようになって欲しいと考えたそうです。まさに僕のセルフケアメソッドと同じです。

様々な議論を経て、まずはスモールステップでリカバリータイム(RT)を導入することから始め、それが現場に定着した段階で次のステップとしてデイリーシェアリングを取り入れることで、現在の課題を乗り越える環境をつくるという方策を決めました。

リカバリーが必要なのは障がいのあるメンバーだけでなく、すべての社員であるという価値観に至ったため、まずはPJメンバーのチームで仮導入し経験値を引き上げ、実際に有効であるという実感を持つようにしました。RTは休憩ではなく仕事の一環として定義し、必要な頻度、一回当たりの時間、RTに実施することなどを決めました。

RT導入の1か月前から管理者に向けた説明の機会を設け、その場で社長自らが本プロジェクトを全社で推進することを宣言しました。ここまで力を入れてきたプロジェクトだったらスムースに進みそうと思うでしょ?

しかし、この記事を書いている時は、丁度実施が始まる段階なのですが、PJメンバーから聞こえてくるのは「思ったより現場には抵抗感がある」です。
新しいことや、未経験なものには不安があるのは当然です。RTの有効性は理屈としては分かるけれど「全社導入って言うけど、現場はそんなに簡単じゃないんだよ」という心理になりがちです。

PJメンバーはここが踏ん張りどころです。新しい取り組みの際に必要な最後の要件は「覚悟」ですから。本気を見せつけることです。人の習慣は21日間で形成されると言われます。まずは1か月しっかりやりきること、そうすると上手くいく所と、そうでないところに分かれます。好事例を全社共有し、上手くいかなかった事例はリサーチし改善策を提言するなどのアクションがあると良いでしょう。

100名以上の規模でのRTの全社導入は始まったばかりです。ビフォーアフターで定量・定性的にどのような変化が生まれるのか、今から楽しみです。RT定着後、デイリーシェアリングを導入することが決まっていますので、またいずれ続編をレポートします。

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